Android黎明期のクラムシェルたち ( その6 Dynabook AZにロシアンROMとAndroid4.1 )

10年ぶりにインストールしてみよう



[1] 事前準備など

まずは、今後必要となるツールを事前に準備しましょう。

(1)nvflash

Dynabook AZへのインストールは、内部パーティションに直接データを書き込む形式で行われます。それを実行するのが、nvflashというツールです。まずは、これをインストールします。

  • Windows
    後述する「ロシアンROM」に含まれているので、それを利用しましょう。
  • Linux(Debian/Ubuntu)
    ”nvflash_20110628-2_all.deb”で検索してみてください。2021/01現在では、このあたりからダウンロードできそうです。完了後、dpkgでインストールします。
$ sudo dpkg -i nvflash_20110628-2_all.deb  

(2)adb

Android Debug Bridge(adb)は、PCとAndroidデバイスを接続、通信を行うためのツールで、本来は開発ツール(Android SDK)に含まれているものです。しかし、一般にはapkファイルのインストール、shellの実行に使う用途がほとんどなので、別途単体でインストールできるツールが用意されています。

  • Windows
    使ったことがありませんが、”15 seconds ADB Installer”というツールで、簡単にインストールできるとのことです。
  • Debian/Ubuntu
    Packageがあるようです。
$ sudo apt-get install android-tools-adb  

(3)miniUSBケーブル

Dynabook AZとPCの接続には、miniUSBケーブルが必要です。現在主流のmicroUSBケーブルではありませんので、注意が必要です。こちら側から見て、左がmicroUSB、右がminiUSBです。

(4)リカバリーモード

これはツールでも何でもありませんが、nvflashでデータを書き込む場合は、Dynabook AZを「リカバリーモード」にしておかないといけません。
具体的に言うと、

  • ESCとControlキーを押しながら、電源オン。
  • すると、画面は真っ暗なままですが、Powerボタンのみが点灯。
  • この状態で、microUSBケーブルでPCと接続。
  • nvflashでデータを書き込む

という手順を踏みます。


[2] ロシアンROM(Android2.2)のインストール

さて、それでは早速”ロシアンROM”をインストールしてみましょう。
これについての情報は、2021年現在でも”ロシアンROM”、”ac100_flash_v4b.z”あたりで検索すれば、いくつものサイトが見つかります。

例えば、こちらのサイトでは、ロシアンROMのダウンロードから、Windowsでのインストール方法まで、丁寧に説明されています。説明では、ロシアのサイトにアクセスすることになっていますが、現状では直接ダウンロードできるようです。

(1)Windowsでのインストール

先のサイトの説明に従ってください。116と117のちがいですが、どちらか一つしかインストールできませんので、うまくいった方を使います。ちなみに、わたしのAZは、”116”でした。たぶん日本で流通しているのは、こちらでしょう。

(2)Linux(Debian/Ubuntu)でのインストール

上記の”ロシアンROM”パッケージはWindows用なので、Linux(Debian/Ubuntu)ではそのまま使えませんので、スクリプト”flash_full_116.cmd”をLinux用に書き換えます。もちろん、先に”nvflash_20110628-2_all.deb”をインストールしておく必要があります。

#!/bin/bash  
nvflash --bl /usr/lib/nvflash/fastboot.bin --go  
nvflash -r --rawdevicewrite 0 1536 img/116/2_BCT_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 1536 256 img/116/3_PT_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 1792 1024 img/116/4_EBT_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 2816 2560 img/116/5_SOS_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 5376 4096 img/6_LNX_raw_v3_uni.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 9472 512 img/7_MBR_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 9984 153600 img/8_APP_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 163584 204800 img/9_CAC_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 368384 1024 img/10_MSC_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 369408 256 img/11_EM1_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 369664 632320 img/12_UDA_raw.img  
nvflash -r --rawdevicewrite 1001984 256 img/13_EM2_raw.img  
  

ダウンロードディレクトリ内に、上記を”f116.sh”として作成、実行します。

$ chmod +x f116.sh  
$ ./f116.sh  

完了後、電源を入れ直すと、Android2.2が立ち上がります。


[3]Android2.2で使えるソフトウエア

さて、インストール完了後のリスタートで各種設定が始まりますが、Google Market(Playの前身)は、異常終了してしまいます。仮に立ち上がったとしても、2.2レベルで動くソフトウエアはほとんど登録されていませんから、あまり意味はありません。

したがって、この環境で使えるソフトウエアは、apkファイルを捜してきて手動でインストールするしか道はありません。IS01用のツールが登録されているIS01用アップローダーから、ダウンロードすると良いと思います。そのなかで、使えそうなものを上げておきましょう。

  • ESファイルエクスプローラー
    まずは、これをadbでインストールします。
$ adb install 'ES ファイルエクスプローラ_3.2.5.3.apk'  

これを入れてしまえば、apkファイルは、ESファイルエクスプローラーからインストールすることができるようになります。ネットワークにも対応しているので、母艦にダウンロードしたapkに直接アクセスし、インストールすることも可能です。

  • Jota Editor
    ”IS01用アップローダー”にあるapkはロックがかかっているので、適当なサイトから持ってきてください。このツールがあるだけで、Dynabook AZも文書入力マシンとして蘇るかもしれません。
  • Opera Mini
    ブラウザは、セキュリティの関係でほとんど使えなくなっていますが、Opera Miniはプロキシ経由でアクセスしているので、その問題がありません。
  • Rock Player
    動画を見たいならこのツールしかなさそうです。

こんなところでしょうが、今ひとつぱっとしません。
Android黎明期のクラムシェルたち(その2 LifeTouch NoteでLinuxを使おう)で説明したDebianもインストールは出来ますが、”/data”に割り当てられているストレージが少なく、ツールの追加が難しい状況です。

以上から、ロシアンROM(Android2.2)での使用は、極めて限定的と言わざる得ません。まあ、最初からわかっていたことですけどね。


[4] Android4.1(CyanogenMod10.1)をインストール

Dynabook AZには、Android4.1もインストールすることが出来ます。カスタムROMで有名なCyanogenModの10.1をベースにしたものです。このサイトには、10.1、10.2、11.0に対応したファイルが用意されていますが、10.1しかまともに動かないので注意してください。

また、

Kernel/Nvec problems: Suspend/Resume not working. No longpress on power button event.

とあるように、電源関係が全くインプレメントされていないようです。スリープが出来ないとかいうレベルではなく、電源OFFのダイアログすら出てきません。終了するには、電源スイッチ超長押しの強制終了しかないレベルなのです。

それでもAndroid4レベルなら、Google Playは動きますし、対応ソフトウエアもそれなりにあるので、ニーズによってはこちら選択もあるでしょう。ただ、レスポンスの悪さを十分覚悟しないといけません。インストールについては、こちらのサイトを参考にすると良いでしょう。


まとめ

以上、一通りのインストール作業をやってみました。一応の動作は確認できましたが、残念ながら使ってみたくなるようなレベルではありませんでしたね。10年という時間の経過によるものもありますが、それ以上にDynabook AZというマシンにAndroidがフィットしないからだと思います。

それならば汚名挽回ということで、次回は”Ubuntu13.10”をインストールして使ってみましょう。