ハードボイルド傑作選1 ( 中島河太郎編 )

ハードボイルドの香りもしない、レベルの低い作品にウンザリ。


題名 作者 評点 コメント
非情な睡り 大谷羊太郎 5.5 [別冊小説宝石 昭和46年6月]女優から護衛を依頼された悪徳探偵は裏切り計画を立てたのだが..。ラストのひねりは工夫しているが後味が良くない。
腐ったオリーブ 河野典生 3.0 [宝石 昭和35年2月]古臭くつまらん。
石の条理 清水一行 4.0 [オール読物 昭和43年6月]預金をだまし取った男を偶然見かけた女銀行員は追求を試みるが、ラストは腰砕け。これのどこがハードボイルドなのか。
風のバラード 中田耕治 3.0 [推理ストーリー 昭和36年12月]ひどい出来で読むに耐えない。
地獄の猟犬 皆川博子 3.0 [別冊小説宝石 昭和49年12月]バンドの乱脈な関係を描いただけの風俗物。これまたひどすぎる。
星の岬 高城高 7.0 [宝石 昭和38年11月]組織から逃亡を続ける男とそれに従う女。ラストのひねりが効いている。ようやくマシな作品が読めてホッとしました。
グアム島 菊村到 4.0 [問題小説 昭和47年5月]長い割に盛り上がりのない話。主人公も意気地がなく、どう見てもハードボイルドではないね。
死者たちの祭 生島治郎 5.0 [オール読物 昭和43年2月]大藪春彦によくある設定と展開。オリジナリティを感じない。

中島河太郎編集のアンソロジーは、これまで多数読んできましたが、どのテーマにおいてもそれなりの作品をセレクションしてくる手腕には常々感心しておりました。
しかし、今回の「ハードボイルド傑作選」は正直頂けません。全8作品中、佳作レベルなのは高城高「星の岬」のみ。読むに耐えないような作品が3篇も含まれているとなると、なんとも言いようがありません。
ハードボイルドという分野について、編者の中島河太郎は、『ハードボイルド推理小説の誕生からほぼ半生記も経ようとしているのに、わが国への移植はだいぶ遅れた。』と述べていますが、たしかに層の薄い分野であり、しかも昭和51年段階でのセレクションですから、そのレベルに限界があるのは致し方がないと思いますが、もう少しマシな作品はなかったのでしょうか。編者の『日本に根を張りはじめた「ハードボイルド傑作選」の試みは、はじめてのものだけに、大いに楽しんでいただけると確信している。』という言葉が虚しく響いてしまいました。

このアンソロジー「ハードボイルド傑作選1」ですが、第2巻目は出ていないような気がします。この内容なら致し方ないでしょうね。


ベストブック社 昭和51年12月20日 初版発行 212ページ 600円