ミステリーの愉しみ(1) 奇想の森 ( 鮎川哲也、島田荘司編 )

既読の作品が多く、残り物に福はなかった。


題名 作者 評点 コメント
屋根裏の散歩者 江戸川乱歩 7.5 [新青年 大正14年8月夏季増刊]屋根裏の散歩というイメージは凄いが、犯罪の露顕があっけなさすぎる。
痴人の復讐 小酒井不木 4.0 [新青年 大正14年12月]新青年傑作選集4 怪奇編 ひとりで夜読むなで読了済。
街角の文字 本田緒生 3.0 [新青年 大正15年1月]何というくだらない作品。こんな作品選ぶなよ。
煙突奇談 地味井平造 6.5 [探偵趣味 大正15年6月]幻想譚と現実の事件との関連が面白い。
五体の積木 岡戸武平 4.0 [新世界 昭和4年8月]怪奇探偵小説集で読了済。
蜘蛛 甲賀三郎 6.0 [昭和五年一月 文学時代]13の密室で読了済。
告げ口心臓 米田三星 6.5 [昭和6年9月]新青年傑作選集4 怪奇編 ひとりで夜読むなで読了済。
振動魔 海野十三 7.0 [昭和6年11月]新青年傑作選集3 推理編3 骨まで凍る殺人事件で読了済。
蔵の中 横溝正史 8.0 新青年傑作選集1 推理編1 犯人よ、お前の名は?で読了済。
偽悪病患者 大下宇陀児 7.5 [昭和11年1月]新青年傑作選集3 推理編3 骨まで凍る殺人事件で読了済。
ハムレット 久生十蘭 7.5 [新青年 二十一年十月]日本代表ミステリー選集01 口笛ふいて殺人をで読了済。
幽霊妻 大阪圭吉 7.5 [新探偵小説 昭和22年4月]怪奇探偵小説集で読了済。
天狗 大坪砂男 6.0 [宝石 昭和23年8月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。
飛行する死人 青池研吉 3.0 [ロック別冊 昭和24年8月]文章は下手くそ、展開はわけがわからん。小説として読めるレベルでない。
三行広告 横内正男 4.0 [別冊宝石 昭和24年12月]ちょっとした思いつきをまとめたレベル。
落石 狩久 8.0 [昭和26年12月別冊「新人競作二十五篇集」]宝石推理小説傑作選1で読了済。
吉野賛十 5.0 [探偵実話 昭和29年4月]盲人の嗅覚を利用した設定は面白いが、解決があまりに非論理的でがっかり。
心霊殺人事件 坂口安吾 7.0 [別冊小説新潮 二十九年十月]日本代表ミステリー選集03 殺しこそわが人生で読了済。

1970年代に「新青年傑作選」と「現代の推理小説」という素晴らしいアンソロジーを世に出した立風書房が、その20年後の1990年始めに満を持して(かどうかは知らないけど)発刊したのが「ミステリの愉しみ」全5巻。

第一巻「奇想の森」巻末の島田荘司の解説によると、

立風書房のお勧めと御厚意により、鮎川哲也先生と二人で、日本ミステリーの精選集を編ませていただけることになった。全五巻の構想でスタートし、第一巻を筆者が担当し、二巻、三巻を鮎川先生、四巻は評論家の山前譲氏に加わってもらおうという計画である。第一巻から四巻まで、並ぶ名作は大よそ時代の流れに沿うはずである。
そして五巻だけを一種の別巻として再び筆者が担当するが、これは友人の綾辻行人氏の協力を仰ぎ、まったく異なるコンセプトで編集する。すなわち、平成本格時代を担うべき新人作家による厳選された傑作短編を、すべて書下ろしで並べようという型破りの計画である

とのこと。

この「奇想の森」ですが、全18編中12篇が既読。乱歩の「屋根裏」も当然再読なので、新規に読んだのは5篇のみ。その出来がどれもひどくて、残念ながらつまらない読書となってしまいました。三巻まではこんな状況が続きそうなので、期待は後半の二巻ということになるでしょう。

立風書房 一九九一年十二月二十日 第一刷発行 478ページ 2200円