ミステリーの愉しみ(2) 密室遊戯 ( 鮎川哲也、島田荘司編 )

中盤に出来の悪い作品が散見、「ミステリの苦しみ」になってしまった。


題名 作者 評点 コメント
密室の魔術師 双葉十三郎 6.0 [昭和二十三年一月 黒猫]続・13の密室で読了済。
青鬚の密室 水上幻一郎 5.0 [昭和二十五年七月 妖奇]短い中に工夫をこらしているが、ラストの趣向が生かされていないのが残念。
犯罪の場 飛鳥高 5.0 [昭和二十ニ年一月 宝石]13の密室で読了済。
明日のための犯罪 天城一 7.5 [昭和二十九年四月 宝石]続・13の密室で読了済。
星空 杉山平一 3.0 [昭和二十ニ年四月 新探偵小説]なんでこんな作品が選ばれたのだろう。
夜行列車 六郷一 7.0 [昭和二十三年一月 平凡]探偵作家クラブの土曜会という発端から、幻想的な列車内の事件まで中々読ませる。
カロリン海盆 香住春吾 8.0 [昭和二十四年五月 別冊宝石]戦時中の南方への輸送船を舞台にした殺人事件。舞台設定の面白さ、犯人の計略にも説得力がある。
妖婦の宿 高木彬光 8.5 探偵小説年鑑(1950年版)で読了済。
黄色の輪 藤村正太 5.0 [昭和二十四年十二月 別冊宝石]娘を殺したのは後妻だと知らされた男は怒りの刃を向けるが...筋書はわかってしまうし、少し長すぎるのでダレ気味。
東風荘の殺人 谿渓太郎 4.0 [昭和二十四年十二月 別冊宝石]古臭くて陳腐な探偵物。いまでは読むに耐えない。
アリバイ 藤雪夫 4.0 [昭和二十九年十一月 探偵実話]つまらない化学トリックと何の意外性もない展開。
木箱 愛川純太郎 5.0 [昭和二十六年十二月 別冊宝石]木箱を巡るたわいないトリックだけで、何の意外性もない。
青い香炉 仁木悦子 6.5 [昭和五十五年六月 野性時代]山荘での推理ゲームという趣向は面白いが、事件が複雑過ぎてすっきりしない。
松王丸変死事件 戸板康二 5.5 [昭和三十四年七月 宝石]謎が専門的でわかりにくいし、全体に長過ぎて冗漫。
  • 昭和二十年代に登場した作家の探偵小説は、本当につまらないものが多い。
    スタイルは横溝や高木のものまねで本格物を標榜するが、小説としては及びもつかない低レベル。さらに時代経過による劣化が加わるので、いまではとても読めないレベルのオンパレード。
  • このあたりから無理に作品をチョイスすると、悲惨なことになってしまうのは「宝石推理小説傑作選1」を読んでいて痛感した次第。この巻でも中盤の作品がそれにあたります。「宝石」が新人作家を濫造したことが、その大きな要因でしょうが、戦前の「新青年」に比べると、目を覆いたくなってしまいます。
  • 中島河太郎が角川文庫版「宝石傑作選集」で、昭和30年以降の作品に絞ったのはさすが、と言わざるえません。
  • それでも、少ないながらも読む価値のある作家はいるわけで、この巻では香住春吾の「カロリン海盆」がそれにあたります。その昔、岡田鯱彦の「妖鬼の呪言」とともに、「別冊宝石」で読んでいたことを思い出しました。

立風書房 一九九ニ年二月二十日 第一刷発行 476ページ 2200円