ミステリーの愉しみ(3) パズルの王国 ( 鮎川哲也、島田荘司編 )

この巻も既読が多く、盛り上がらない読書となりました。


題名 作者 評点 コメント
殺人演出 島田一男 6.0 [宝石 昭和二十一年十二月]鮎川哲也の密室探求で読了済。
鸚鵡裁判 鬼怒川浩 6.5 [昭和22年4月]宝石推理小説傑作選1で読了済。
砥石 岩田賛 5.0 [昭和22年4月]宝石推理小説傑作選1で読了済。
三つの樽 宮原龍雄 5.0 [昭和24年12月別冊「新鋭三十六人集」]宝石推理小説傑作選1で読了済。
綺譚会事件 飛島星象 4.0 [別冊宝石 昭和24年12月]小栗虫太郎のエピゴーネンにすぎず、読ませる魅力に乏しい。
六人の容疑者 黒輪土風 6.5 [新青年 昭和25年4月]毒殺事件の関係者が集まった場で明かされる真相は...無名の作家だが文章力もあるし、探偵役のキャラクタも面白い。
文珠の罠 鷲尾三郎 7.5 [宝石 三十年一月]日本代表ミステリー選集03 殺しこそわが人生で読了済。
死の黙劇 山沢晴雄 4.0 [別冊宝石 昭和28年12月]メリハリに乏しい平板な展開で、小説としてもミステリとしてもつまらない。
勲章 坪田宏 5.0 [昭和27年4月]宝石推理小説傑作選1で読了済。
肌の告白 土屋隆夫 6.0 [肌の告白(三十四年六月)の為に書き下ろした 短編集]日本代表ミステリー選集01 口笛ふいて殺人をで読了済。
ポプラ荘の事件 大庭武年 5.0 [新青年 昭和6年12月]偽装トリックは前例はあるものの悪くないが、いかんせんストーリー展開に盛り上がりがない。
山本禾太郎 5.0 [新青年 大正15年6月]調書をベースにした展開は当時としては新鮮だったろうが、いかんせんミステリーとして面白くない。大正年代の作品に多くを望むのは酷なのかもしれない。
空間心中の顛末 光石介太郎 7.5 [ぷろふいる 昭和10年9月]夫に監禁された妻は愛人と密書を交わし合うが...。構成はある程度予測できるもののよく考えられている。
  • ミステリの愉しみ」の最初の3巻を読み終えたわけですが、ここまで極めて盛り上がらない読書時間を過ごしています。確かに、これまでに多数のアンソロジーを読み終えてきているので、既読の作品が多いことが一番の要因でしょうが、それだけではありません。
  • 「ミステリの愉しみ」全5巻のセレクションを見てみますと、1970年初めに同じ「立風書房」から出版された「新青年傑作選」と「現代の推理小説」との重複を避けているように思われます。この2つに収録されている作品は傑作、秀作、高レベルの作品揃いなのですが、「ミステリの愉しみ」を先に手に取る読者には読むことが出来ないということになります。
  • 一方で、「宝石傑作選」、「新青年傑作選集」など既刊の著名アンソロジーからの重複は極めて多く、一貫したポリシーを感じることが出来ません。
  • 最高レベルの作品は選択されず、中間レベルの作品は重複だらけ。新たに選択された作品のレベルはお世辞にも高いと言えず、上澄み液を全て捨てられた残存物のような出来なのですから、「ミステリの苦しみを味わされた」と言わざるえません。
  • このシリーズのアンソロジストは鮎川哲也と島田荘司ですが、「中島河太郎のほうが一枚も二枚も上」でしたね。

立風書房 一九九ニ年四月二十日 第一刷発行 477ページ 2200円