ミステリーの愉しみ(4) 都市の迷宮 ( 鮎川哲也、島田荘司編 )
佳作揃いの作品集。ようやく「ミステリーの愉しみ」を味わえました。
題名 | 作者 | 評点 | コメント |
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壜づめの密室 | 都筑道夫 | 6.0 | [小説CLUB 昭和50年1月]退職刑事物の一編。論理展開に今ひとつ説得力がない。 |
わが師、彼の京 | 山村直樹 | 6.0 | [幻影城 昭和51年9月]京都の書家を舞台に中々雰囲気のある作品だが、ミステリ的にはひねりもなく平凡なのが残念。 |
隠すよりなお顕れる | 天藤真 | 6.5 | [青樹社『名探偵登場』書き下ろし 昭和52年9月]結婚の邪魔になる女の死体を発見した男は、自殺の痕跡を消してしまうが、陥穽にはまってしまう。 |
或る老後 | 千葉淳平 | 6.0 | [別冊宝石 昭和37年12月]老工場主に取り入る夫婦は、遺産目当ての殺人を計画するが..。ラストが蛇足。その前で切っておいて方が良かった。 |
街の殺人事件 | 島久平 | 5.0 | [黒猫 昭和23年2月]納得のいかない推理と結末。 |
清風荘事件 | 角兔栄児 | 6.0 | [宝石 昭和33年12月増刊号]弟の旅作での自殺を聞かされた兄は、自ら調査に当たる。犯人の設定が平凡で三面記事レベルだ。 |
四桂 | 岡沢孝雄 | 6.0 | [宝石 昭和25年11月]将棋家の周辺で起こった連続失踪事件をアマチュアの内弟子が真相を追う。舞台も面白いし、文章もしっかりしているのだが、いささか冗漫でラストが締まらない。 |
ひきずった縄 | 陳舜臣 | 5.0 | [エロティックミステリー 昭和37年7月]平板でパズルのような出来。この作者にしては気が入っていない作品だ。 |
白鳥の秘密 | 梶龍雄 | 8.0 | [宝石 昭和31年1月]暴露雑誌社長の殺人事件を肺病患者と看護婦が推理する。考えられた構成でよく出来ている。乱歩賞以前の梶龍雄にこんな秀作があったとは知りませんでした。 |
消された死体 | 大谷羊太郎 | 5.0 | [別冊小説宝石 昭和48年6月]目まぐるしい展開で進む犯人当てパズル。盛り込み過ぎでスッキリしない。 |
変調二人羽織 | 連城三紀彦 | 4.0 | [幻影城 昭和53年1月]筋書きがゴタゴタしているうえ、視点がコロコロ変わるので読みづらいことこの上ない。 |
幽霊列車 | 赤川次郎 | 7.0 | [オール読物 昭和51年9月]赤川次郎の第一作。軽妙な文章でリズミカルに進む展開はさすがである。 |
砂蛾家の消失 | 泡坂妻夫 | 7.5 | [幻影城 昭和52年11月]建物消失と時間のトリックは中々見事。チェスタトンを彷彿とさせる初期の泡坂は本当にすごい。 |
- これまで今一つ盛り上がりに乏しかった「ミステリーの愉しみ」シリーズでしたが、この巻は中々の作品揃い。昭和50年代の作品が中心ですが、中間に配された昭和30年代の作品の悪くありません。
- 特に梶龍雄の「白鳥の秘密」は、とても昭和31年の作品とは思えないモダンな構成で、謎解きとトリックもよく出来ています。まあ、肺病病みの患者という設定には時代を感じますけどね。それ以外は50年代の作品と比べても、なんら古さを感じません。
- 雑誌「幻影城」から3篇選ばれているのが目を引きます。旧作のリバイバルで登場した「幻影城」ですが、改めて振り返ってみると、ここから輩出された新人作家のレベルにも驚かされます。ここで取り上げられた泡坂妻夫、連城三紀彦以外にも、竹本健治、田中芳樹、栗本薫、友成純一とそうそうたるメンバーです。
- 昭和50年代は、一番真剣にミステリを読んでいた時代なので、懐かしさを覚えながら楽しい読書が出来ました。
立風書房 一九九ニ年六月二十日 第一刷発行 494ページ 2200円