名探偵13人登場 ( 中島河太郎編 )

飛び抜けた傑作はないものの佳作揃い。名探偵登場の本格物はやはり楽しい。


題名 作者 評点 コメント
夢の中の女 横溝正史 6.5 [週刊東京 昭和33年11月]<金田一耕助>三年前姉を殺された女が今度は魔の手にかかってしまう。ちょっとしたヒネリは面白いが、同時に少しがっかり。
怪奇を抱く壁 角田喜久雄 6.5 加賀美敬介探偵小説年鑑(1948年版)で読了済。
X重量 木々高太郎 4.0 [週刊朝日 昭和28年1月]<大心地先生>色々煽っておいて、この解決とは呆れる。。
選挙殺人事件 坂口安吾 6.5 [小説新潮 昭和28年6月]<巨勢博士>当選するはずのない選挙に打って出た男の動機はなにか。ラストはあっけないが、設定は面白い。
変化牡丹 山田風太郎 7.5 [キング 昭和29年6月]<応伯爵>「妖異金瓶梅」の一編。大胆なトリックが面白い。ただこの連作、犯人が決まっているのが弱点だな。
電話でどうぞ 島田一男 7.0 [週刊東京 昭和32年3月]<南郷弁護士>組長に遺言状作成を頼まれた南郷。続けざまに起きる事件は目まぐるしいが、良いテンポで読ませる。
赤い痕 仁木悦子 6.5 [宝石 昭和33年7月]<仁木兄妹>ばあやの実家に出向いた仁木兄妹が近辺の変死事件に遭遇する。過去とのからみが都合良すぎるが、ほのぼのとしたやりとりは悪くない。
滝に誘う女 戸板康二 5.0 [小説新潮 昭和35年11月]<中村雅楽>清水寺から同行した女は途中でクスリを飲み死んでしまう。何のヒネリもない展開。
砂とくらげと 鮎川哲也 7.5 [宝石 昭和36年10月]<星影竜三>よく考えられた本格短編。予想外の自体が謎を呼ぶという設定が面白い。
縄の繃帯 陳舜臣 5.5 [エロチック・ミステリー 昭和37年8月]<陶展文>ちょっとお粗末な写真トリック。陶展文のハッスルぶりだけが面白い。
アドリブ殺人 都筑道夫 5.0 [推理 昭和47年5月]<鍬形修二>劇団の看板女優殺害事件。特に何もない平凡な作品。
浮気する死体 海渡英祐 7.5 [問題小説 昭和48年4月]<吉田茂警部補>日本版ドーヴァー、吉田茂警部補物。このシリーズ、どの作品もよく考えられていた記憶があるが、この作品も悪くない。
月世界の女 高木彬光 6.5 [昭和24年9月号]<神津恭介新青年傑作選集1 推理編1 犯人よ、お前の名は?で読了済。

日本を代表する名探偵13名登場という趣向のアンソロジーです。昭和50年という新本格以前の発行年を考えると、メンバーはこんなものでしょう。それでも、一部の作品を除いて一定以上のレベルを保っており、編者中島河太郎のセレクションの良さが光ります。

KKベストセラーズ 昭和50年12月5日 初版発行 304ページ 600円