宝石推理小説傑作選1 ( 「宝石推理小説傑作選」編集委員(鮎川哲也・大内茂男・城昌幸・高木彬光・中島河太郎・星新一・山村正夫・横溝正史) )

前半の作品の出来が酷く、とても傑作選とよべる内容ではありませんでした。「宝石」のレベルはこんなものだったのだろうか。


題名 作者 評点 コメント
小説編
犯罪の場 飛鳥高 5.0 [昭和22年1月]13の密室で読了済。
不思議の国の犯罪 天城一 8.0 [昭和22年2・3月合併号]13の密室で読了済。
網膜物語 独多甚九 4.0 [昭和22年2・3月合併号]これのどこが面白いか。
殺人演出 島田一男 6.0 [昭和22年2・3月合併号]鮎川哲也の密室探求で読了済。
鸚鵡裁判 鬼怒川浩 6.5 [昭和22年4月]よくまとまった短編。もう少しひねりがあれば。
砥石 岩田賛 5.0 [昭和22年4月]つまらない機械トリック。
軍鶏 永瀬三吾 5.0 [昭和22年10月]これも取り柄がない。
サンタクロース殺人事件 乾信一郎 5.0 [昭和22年11・12月合併号]謎解きになっていないぞ。
幽霊消却法 海野十三 6.0 [昭和23年5月]小便絡みのギャグは楽しいが、それだけ。
天狗 大坪砂男 6.0 [昭和23年7・8月合併号]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜(I)で読了済。
くすり指 椿八郎 4.0 [昭和24年7月臨時増刊]わけのわからん話で傑作選に入る作品ではなかろう。
小草の夢 佐藤春夫 4.0 [昭和24年7月臨時増刊]これのどこが面白いのか。
疑問の指環 鷲尾三郎 5.0 [昭和24年7月臨時増刊]長い割にはつまらん。これが傑作選入りなのか。
猿神の贄 本間田麻誉 8.0 [昭和24年8月別冊]ヒロインのモノローグと暗い雰囲気を描く文章とが相まった秀作。昔「小説推理増刊」で読んだことがあった。
黒い影 宮野村子 7.0 [昭和24年9月臨時増刊]古風な設定だが、読ませる。
道化役 城昌幸 5.0 [昭和24年12月]これが傑作集の作品か
地虫 鮎川哲也 6.0 [昭和24年12月別冊「新鋭三十六人集」]長い割にはなんの意外性もない。
三つの樽 宮原龍雄 5.0 [昭和24年12月別冊「新鋭三十六人集」]これもつまらない。
接吻物語 藤村正太 7.5 [昭和24年12月別冊「新鋭三十六人集」]結末は見当がつくが、よく考えられている。
真実追求家 岡田鯱彦 7.0 [昭和25年2月「読切十六人集」]少しくどいし、意外性もない。
痴人の宴 千代有三 3.0 [昭和26年5月]何というつまらない作品。
メヒィストの誕生 水谷準 7.5 [昭和26年8月]少し納得がいかないところもあるが、意外性のある佳作。
落石 狩久 8.0 [昭和26年12月別冊「新人競作二十五篇集」]これは良く出来ている。文章構成も悪くない。
佐門谷 丘美丈二郎 7.5 [昭和26年12月別冊「新人競作二十五篇集」]怪談話との融合が面白い。
勲章 坪田宏 5.0 [昭和27年4月]見え見えの展開だ。
青い帽子の物語 土屋隆夫 4.0 [昭和27年6月「新鋭二十二人集」]探偵小説年鑑(1953年版)で読了済。
評論
座談編
私の探偵小説 坂口安吾 [昭和24年6月]
「刺青殺人事件」を評す 坂口安吾 [昭和24年1月]言っていることはよくわかる。安吾はやはり先見の明がある。
<対談>「探偵小説」対談会 江戸川乱歩、横溝正史 [昭和24年10月]すごい対談だ。
「猿神の贄」について 江戸川乱歩 [昭和25年1月]
信夫翁通信 木々高太郎 [昭和25年3月]
完璧な探偵小説 大下宇陀児 [昭和26年2月]
犯人当て奨励 大井広介 [昭和26年6月]
樽探偵小説の新領域 埴谷雄高 [昭和26年8月]
<座談会>日本探偵小説界創世記を語る 江戸川乱歩ほか [昭和28年1月]このメンバーはすごい。
ヒッチコックのエロチック・ハラア 江戸川乱歩 [昭和31年2月]
 
  • 「宝石推理小説傑作選」の第一巻。期待して読み始めたのですが、はずれの作品ばかりで、正直がっかりしています。「小説編」26作読んで、出来が良いと感心したのは、天城一、本間田麻誉、狩久の3篇だけとは情けない。
  • 「評論編」では坂口安吾の『「刺青殺人事件」を評す』が、やはり先見性に満ちています。坂口は推理小説ゲーム論者のように言われますが、彼が語っていることの本質は、「作家は自分の世界を確立せよ」ということだと思います。横溝をあれだけ評価しているのも、そのあたりなのでしょう。彼にはもう少し長生き(1955年没)してもらって、EQMMやポケミスを見てほしかった。
  • <座談会>日本探偵小説界創世記を語る(江戸川乱歩ほか)というのは、「幻影城」の「再版に際して」で、『昭和二十七年、森下雨村氏が上京された折、「宝石」誌が開いた懐古座談会』として触れられているものでしょう。出席者は、乱歩を始めとして、保篠龍緒、松野一夫、水谷準、森下雨村、「宝石」側から城昌幸、当時の編集長だった永瀬三吾という面々。

株式会社いんなあとりっぷ 昭和四十九年六月十五日発行 575ページ 限定版八八八部 定価弐萬七阡円 三巻一セット