宝石推理小説傑作選2 ( 「宝石推理小説傑作選」編集委員(鮎川哲也・大内茂男・城昌幸・高木彬光・中島河太郎・星新一・山村正夫・横溝正史) )
前巻に比べ読み応えのある作品が多く、なんとか「傑作選」の名に恥じない内容になっています。
題名 | 作者 | 評点 | コメント |
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巫女 | 朝山蜻一 | 4.0 | [昭和27年6月別冊「新鋭二十二人集」]「探偵小説年鑑1953年版」で読了済。 |
赤い月 | 大河内常平 | 7.0 | [昭和27年6月別冊「新鋭二十二人集」]「探偵小説年鑑1953年版」で読了済。 |
リラの香のする手紙 | 妹尾アキ夫 | 6.5 | [昭和27年8月]現代の推理小説(第3巻) ロマン派の饗宴で読了済。 |
キキモラーしてやられた妖精 | 香山滋 | 7.5 | [昭和27年11月]妖精の裏をかく展開が後味も良く楽しい。 |
私は誰でしょう | 川辺豊三 | 7.0 | [昭和27年12月別冊「新人二十五人集」]日本代表ミステリー選集06 人肉料理で読了済。 |
雁行くや | 島久平 | 5.0 | [昭和28年10月]はっきりしないラストに失望。 |
畸形の天女ー連作の1 | 江戸川乱歩 | 5.5 | [昭和28年10月]変身願望の男は、少女と殺人の共犯になってしまう。残念ながらいささか古さが目立つ。 |
畸形の天女ー連作の2 | 大下宇陀児 | 6.5 | [昭和28年11月]風俗小説の展開なら大下のほうが一枚上だ。うまく盛り上げている。 |
畸形の天女ー連作の3 | 角田喜久雄 | 6.0 | [昭和28年12月]ちっとも天女でない女の嫌らしさが話を展開させている。 |
畸形の天女ー連作の4 | 木々高太郎 | 5.0 | [昭和29年1月]三人の倍量を書いた木々の労力には頭が下がるものの、出来は今ひとつ。 |
ロンドン塔の判官 | 高木彬光 | 8.5 | [昭和29年1月]ロンドン塔における連続殺人。舞台設定の巧みさと史実を絡めた展開、そして意外な結末。三拍子揃った秀作。 |
首 | 横溝正史 | 8.0 | [昭和30年5月]日本代表ミステリー選集06 人肉料理で読了済。 |
鯉幟 | 香住春吾 | 8.0 | [昭和30年5月]病弱の母を考察した犯人を追うとこが見つけた真相は..。語り口もうまいし、ラストの設定もよく考えられている。 |
流木 | 山村正夫 | 5.0 | [昭和30年8月]出来の良くない劇の台本を読んでいるようだ。 |
奇妙な隊商 | 日影丈吉 | 6.0 | [昭和31年5月]突然公園に現れたアラビア遊牧民風の一隊。不思議な小説だが、何のオチもないので拍子抜け。 |
どんたく囃子 | 夢座海二 | 7.5 | [昭和31年6月]35年ぶりの故郷に帰ってきた男は過去の事件現場に出向く。淡々とした記述ながら読ませる。この作家を読むのは初めてだが、筆力に感心した。 |
電話事件 | 加田伶太郎 | 6.0 | [昭和32年9月]電話による脅迫事件の顛末だが、作者の狙いは今ひとつ決まっていないと思う。 |
師匠 | 梅崎春生 | 5.0 | [昭和32年10月]師匠殺しの疑いをかけられた主人公。ラストはあっけないうえ、説得力がない。 |
脱獄を了えて | 楠田匡介 | 6.5 | [昭和32年11月]現代の推理小説(第2巻) 本格派の系譜(II)で読了済。 |
影なき男 | 遠藤周作 | 5.0 | [昭和32年12月]過去を持つ男に金を要求する男。話が暗いし、ラストも今ひとつ。 |
電話 | 吉行淳之介 | 3.0 | [昭和32年12月]日本代表ミステリー選集10 殺人者が追ってくるで読了済。 |
詫び証文 | 火野葦平 | 8.0 | [昭和33年1月]13の暗号で読了済。 |
怪異投込寺 | 山田風太郎 | 8.5 | [昭和33年1月]二重三重の工夫をこらした構成に感心する。さすがとしか言いようがない。 |
ある脅迫 | 多岐川恭 | 7.5 | [昭和33年2月]日本代表ミステリー選集01 口笛ふいて殺人をで読了済。 |
水中花 | 石原慎太郎 | 4.0 | [昭和33年2月]風俗小説にアリバイトリックを付加したようなものか。つまらない。 |
評論座談編 | |||
探偵小説の本格と変格 | 中島河太郎 | [昭和31年2月] | |
<座談会>探偵小説新論争 | 江戸川乱歩、木々高太郎、大下宇陀児、角田喜久雄、中島河太郎、春田俊郎(甲賀三郎氏令息)、(司会)大坪砂男 | [昭和31年6月]冒頭から木々高太郎のご高説を長々と聞かされて読む気をなくしました。大坪砂男が司会というのは珍しいが、文学派の番頭気取りなのだろう。 | |
<座談会>文壇作家「探偵小説」を語る | 梅崎春生、曽野綾子、中村真一郎、福永武彦、松本清張、(司会)江戸川乱歩 | [昭和32年8月] | |
<対談>ヴァン・ダインは一流か五流か | 小林秀雄、江戸川乱歩 | [昭和32年9月] | |
「宝石」十九年史 | 中島河太郎 | 解説 |
- 第一巻に比べると、だいぶ作品のレベルアップを感じます。「死者は語らず 宝石傑作集1・本格推理編」の解説で中島河太郎が記述していたように、昭和30年以降読ませる作品が増えてきたということでしょう。
- 「宝石」出身の作家は多数いますが、高木彬光と山田風太郎はやはりレベルが違います。この巻でも出来の違いを見せつけてくれました。
- 「評論座談編」は、今となっては内容が陳腐で、とても論評する気になりません。
- 色々なアンソロジーを並行して読んでいることもあって、ここまで来ると既読の作品が多くなるのは致し方ないところ。
株式会社いんなあとりっぷ 昭和四十九年六月十五日発行 574ページ 限定版八八八部 定価弐萬七阡円 三巻一セット