年刊推理小説・ベスト10 (1960年版) ( デイヴィド・C・クック編 )

どれも平均以上の出来で、楽しく読めます。ただ圧倒的な印象を残す作品はありませんね。


題名 作者 評点 コメント
そのさきは -闇 ウイリアム・オファレル 6.0 戦後推理小説・ベスト15 (1945-1959)(デイヴィド・C・クック編)で読了済。
もし君が陪審員なら トマス・フラナガン 7.5 EQMM 1959/11 No.41で読了済。
罪人か聖人か ドナルド・E・ウェストレイク 5.0 牧師の化けて寄付金を騙し取った詐欺師二人組。ラストのオチがよくわからない。
暗い片隅 フランク・ウォード 6.5 懺悔室での牧師殺人事件。彼に恨みを抱く警察官が捜査にあたるのだが..。暗く長い話だが、犯人の設定が面白い。
出世と犯人 ジャック・ディロン 6.0 老いた刑事は娘の婚約者とコンビを組んでいるが、その出世主義に疑念を抱く。ちょっとした人情話。
失踪した妻 ロイ・ヴィカーズ 7.0 EQMM 1959/7 No.37 特大号で読了済。
金庫破り J・W・アーロン 5.0 出世の閉ざされた男は金庫から金を盗み、責任者を殺害する。ラストが今ひとつすっきりしない。
もうひとつ手掛りが クレイグ・ライス 6.0 お馴染みマローン物。それだけで面白いが、今回は謎解きが今ひとつ。
子供が消えた日 ヒュー・ペンティコースト 7.5 不可能物として有名な作品。ミスディレクションが面白い。
証人 ヘレン・ニールスン 7.0 冷酷に証人を追い詰める弁護士に下る鉄槌。ラストは予測できるが、悪くない。

デイヴィド・C・クック編の年刊ベスト短編集。先の読んだ戦後推理小説・ベスト15 (1945-1959)は、ここまで15年のベスト集でしたから、その最終年にあたる年刊です。言うまでもなく、こちらが先に刊行されているわけです。訳書も本書が1960年1月、ベスト集は1960年9月の順だったのですね。てっきり、ベスト集が先だと思いこんでいたので、順番が逆になってしまいました。

戦後推理小説・ベスト15 (1945-1959)を読んだ際にも、

読み終えてみると、どれも平均以上の出来栄えであることは否定しませんが、「これは傑作」と唸るような作品は見当たりませんでした。

という感想を挙げましたが、今回も似たような感想です。どうも感受性に問題があるような気もしますが、同時代の日本版EQMM EQMM43号から54号(1960年)を比較対象として見ると、明らかにこちらのほうが上です。もちろん、作品選択の幅が年刊とは違うので、その点を考慮しなければなりませんが、改めて「日本版EQMMのセレクションの良さ」を再認識いたしました。

荒地出版社 1960年1月30日 初版 276ページ 定価300円