幻想と怪奇 1 <英米怪談集> ( 早川書房編集部 )

無名作家の作品が予想以上に面白い、ちょっと意外な読後感でした。


題名 作者 評点 コメント
緑茶 シェリダン・レ・ファニュ 4.0 猿に取り憑かれた男の話なのだが、つまらない。まあ、19世紀の作品に目くじらを立ててもしかたないか。
上段寝台 F・マリオン・クローフォード 7.0 船室に現れる謎の存在が不気味だ。立ち向かう勇気ある主人公像も悪くない。
人間嫌い J・D・ベレスフォード 8.0 振り返って相手を見ると人間の本質がわかるという男。その設定が抜群に面白い。
魅入られたギルディア教授 ロバート・ヒチェンズ 6.0 霊に愛された男の話を聞く牧師。発想は面白いのだが、結末が平凡。
アムワース夫人 E・F・ベンスン 7.0 ストレートな吸血鬼物だが、中々迫力がある。筆力に感心。
アルジャノン・ブラックウッド 6.0 柳に囲まれた島に迷い込んだ二人の男は、そこで異次元の何かを感じるのだが..。今ひとつピンとこない。
パイプをすう男 マーティン・アームストロング 6.5 雨宿りに入った男に主人が懺悔話を始める。鏡のイメージが怖い。
  • 幻想と怪奇」と呼ばれる作品群には、これまでどうも食指が動かなかったのですが、読まず嫌いは良くないと思い直し、徐々に手持ちの本を消化していこうと一念発起いたしました。まずは、ポケミスのアンソロジー「幻想と怪奇 1 <英米怪談集>」から着手していきます。
  • さて、このアンソロジーの解説は、(三・七・編集部M)と署名されていますが、これは都筑道夫ですから、彼が事実上の編集者なのでしょう。目次を見ると、知っている作家はレ・ファニュブラックウッドのみなのですが、さてどうなりますか。
  • 巻頭に掲載されたレ・ファニュの「緑茶」は、わたしでも聞いたことのある作品ですから期待していたのですが、これがどうにもつまらない。「猿にとりつかれた男」というイメージはなんとも変な感じで、「恐怖」と言うより「滑稽」さを感じてしまい、興ざめです。
  • 冒頭から不安な展開でしたが、その後は中々快調。名前すら知らない作家ばかりなのですが、どれも中々の作品揃い。特にJ・D・ベレスフォードの「人間嫌い」の発想には感心。世捨て人となってしまった男との対話とラストが印象に残ります。
  • 終盤には怪奇小説の大家ブラックウッド登場。「」も世評の高い作品のようなので期待したのですが、これまた好みから外れているようで、その長さにいささか退屈感さえ覚えてしまいました。
  • 読み終えてみると「有名な作品が今一つで、無名作家に感心」という、自らの感性にいささか不安をおぼえたものの、楽しく読み進めることが出来ました。さすが、都筑のセレクションというところでしょう。