怪奇小説傑作集3 -英米篇3 ( 平井呈一編 )

後半の3作品は読ませるが、前半は古臭く陳腐な作品が目立つ。


題名 作者 評点 コメント
ラパチーニの娘 ナサニエル・ホーソーン 5.0 特異な体質を持つ娘に惹きつけられる男。少し長くてくどい。
信号手 チャールズ・ディケンズ 6.0 信号所で勤務する男をめぐる怪談。ラストは平凡。
あとになって イーデス・ワートン 4.0 古臭い幽霊話。
あれは何だったか? フィッツジェイムズ・オブライエン 5.0 透明な怪物を捕獲した話。なんのひねりもない。
イムレイの帰還 R・キップリング 4.0 邸宅の前の持ち主の死体を発見した男。異文化への畏怖感が陳腐。
アダムとイヴ A・E・コッパード 2.0 何が書きたいのかよくわからん。
夢のなかの女 ウィルキー・コリンズ 5.0 夢の中で自分を殺そうとした女と再会した男。語り口はうまいのだが、展開が平凡。
ダンウィッチの怪 H・P・ラヴクラフト 7.0 幻想と怪奇 2 <英米怪談集> で読了済。
怪物 アンブローズ・ビアス 7.0 目に見えない怪物のよる殺人事件を裁判形式で語る構成がうまい。
シートンのおばさん ウォルター・デ・ラ・メア 7.5 友人に誘われ田舎に出向いた男はそこで彼のおばと出会う。不気味なおばさんが怖いぞ。

 どうも古臭さの隠せない「怪奇小説傑作集」ですが、今回も前半の作品にはいささかうんざり、読み通すのに苦労しました。
この巻の目玉であろうH・P・ラヴクラフトの「ダンウィッチの怪」は既読なのでスキップしましたが、その後のアンブローズ・ビアス「怪物」、ウォルター・デ・ラ・メア「シートンのおばさん」は、なかなかの出来。特に後者の不気味さはなかなかのもので感心しました。結局、「異次元の怪物より異常な人間のほうが怖い」、そういうことなのでしょう。モダンなホラーはそのあたりをついてきます。


東京創元社 1969年3月17日初版 1981年2月27日24版 403ページ 400円