恐怖推理 衝撃ミステリー集 ( 中島河太郎編 )

レベルの高い佳作揃いのアンソロジー。セレクションに感心、楽しく読めました。


題名 作者 評点 コメント
亡霊の電話 佐野洋 7.0 [別冊小説宝石 昭和42年9月]宿直担当の男の妻が殺され、男は死んだ妻からの電話があったと言う。ラストに意外性もあって読ませる。
館山寺の女 島田一男 6.5 [別冊小説宝石 昭和42年9月]心中を図ったが生き残った男女。女はその後死亡したとされるが、新婚旅行中の男の元に現れるというのだが..。ラストが今ひとつ面白くない。
墓場の丁 都筑道夫 7.0 [小説宝石 昭和45年9月]対立する組が仕切る戦前の工事現場を舞台にヤクザ映画もどきの展開。面白く読めます。
狂気の壷 斎藤栄 8.0 [別冊小説宝石 昭和46年2月]発掘現場から壺を持ち出した男は幻覚を見ることになる。ラストの設定までうまく出来ている。
死化粧師 岩川隆 5.0 [別冊小説宝石 昭和46年2月]趣味の悪い変態物。
死者の便り 三好徹 7.0 [別冊小説宝石 昭和46年6月]自殺した男は、その死後自ら殺されたと訴える。手紙を受け取った新聞記者は調査を始めるのだが。ラストは少し意表を突かれた。
望洋の碑 陳舜臣 7.5 [別冊小説現代 昭和46年7月]台湾に帰省した男は一人の女に目を奪われる。ミステリとしては弱いが、作品全体の雰囲気が良い。
赤いスポーツ・カー 山村正夫 7.5 [推理 昭和47年6月]恋人に会いに名古屋に出向いた女は過去のひき逃げ事件に巻き込まれる。ラストは少し怖いよ。
死霊の家 草野唯雄 6.0 [別冊小説宝石 昭和48年8月]淫らな夢に悩む画家は旅先で夢に出てくる屋敷を見つける。因果話だね。
誰かが死んでいた 菊村到 7.0 [別冊小説現代 昭和48年1月]夫婦の留守中にマンションの室内で死んでいた見知らぬ男。ラストに救いがあるのが良い。
殺意が忍びこむ 夏樹静子 7.5 [小説現代 昭和47年12月]密会中のホテルで目撃した墜落事件と娘のひき逃げ事件に揺れる女医。スピーディな展開がうまい。
悪霊の家 海渡英祐 8.0 [別冊小説宝石 昭和49年8月]呪われた館に滞在することになった男女。そこで起こった二重殺人。見当はつくがなかなか読ませる。
鼠の贄 高木彬光 7.5 [新青年 昭和25年5月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。

先に読んだ「殺人鬼の饗宴 恐怖ミステリー集(中島河太郎編・解説)」は「昭和50年代に中間小説誌に掲載された作品」からのセレクションでしたが、こちらは高木彬光の一篇を除いて、昭和40年代に中間小説誌からのもの。前作同様、出来の良い作品揃いで、編者中島河太郎の目利き具合に感心しました。

この現代の平板無味に飽き飽きしている私などは、幻怪妖異への憧憬の押さえ難いものがあるが、そうかといってそのまま鵜呑みにするには、あまりに矛盾撞着する話が多い。
たとい現代の科学が万能ではないにせよ、常識科学の埒を超えては却って空疎なものになりかねない。
この恐怖小説と推理小説との特色を合わせ存した作品が詰められたら、最も楽しい一巻ができるだろうと、選んでみたのがつぎの十三篇である。

上記は「編者のことば」ですが、その目的は十分に達成できたアンソロジーと言えるでしょう。


KKベストセラーズ 昭和50年10月5日 初版発行 昭和52年7月1日 14版発行 349ページ 650円