戦後推理小説・ベスト15 (1945-1959) ( デイヴィド・C・クック編 )

どの作品も平均以上の出来ですが、戦後15年の傑作選と考えると今ひとつですね。


題名 作者 評点 コメント
納屋から出た死体 マーガレット・マナーズ 8.0 隣家の夫妻と対立している老女の視点で描かれる物語。意外な展開が面白い。
完全論者 マーガレット・セント・クレア 7.0 絵を書くのが趣味の叔母と同居することになった青年の話。陽気で少し外れている老女はそれだけで怖い。
復讐 サミュエル・ブラス 4.0 陳腐な出来でとても15年ベストに入る作品ではない。
殺人経験者 アーサー・ウイリアムズ 7.5 EQMM 1959/2 No.32 新春に贈る中篇特集で読了済。
恐喝 アラン・V・エルストン 7.0 選挙間近の市長は女の巧みな恐喝に狼狽えるが..。後味の良い結末へとうまくまとめている。
少年の意志 Q・パトリック 6.5 子供の他愛ない恐喝につけいられる男の話。不気味さが今ひとつ足りない。
会釈 ジョン・P・フォラン 5.0 強盗犯の計略が今ひとつ。
小切手 リチャード・デミング 7.5 傍若無人な富豪に息子を轢き殺された男の復讐話。ラストのオチが面白い。
手ちがい ウォード・ホーキンス 7.5 刑事の妻を殺そうとする脱走犯の追跡という単純な展開だが、緊張感を維持して読ませる。
チャイニーズ・パズル リチャード・マーステン 5.0 この作家にしてはぱっとしない出来。ベスト15に選ばれるような作品ではないでしょう。
初舞台 エヴァン・ハンター 6.0 取り調べを受ける不良少年の物語だが、もう古くなってしまった。
多妻主義者 ケネス・フィアリング 7.0 重婚している男の妻が一人ずつ亡くなっていく。ラストは暗示的である。
死刑執行の日 ヘンリー・スレッサー 7.0 どこかで読んだ記憶がある。ラストはわかってしまうでしょう。
そのさきは -闇 ウイリアム・オファレル 6.0 強盗にあった夫人は懇意のエレベータボーイを告発するが..。大した出来ではない。
死の壜 ギルバート・ラルストン 6.0 爆弾処理の話だが、最近のテレビドラマで見慣れてしまったので、新味を感じない。

編者のデイヴィド・C・クックは、毎年「The Best Detecive Stories of the Year」を編纂しているアンソロジスト。

「編者まえがき」でクックは、

われわれの《年刊推理小説ベスト10》が、この種の刊行物のあいだにあって、最古の歴史を誇るばかりでなく、内容的にも最良のものであることは、われわれの知識と信念とにかけて断言することができるのである。

と自信たっぷりに断言したうえで、本編については、

今年は新しい趣向に出ることにした。すなわち、わがアメリカにおいて 刊行される諸雑誌に発表された推理短篇のうちから、その年次の最優秀作をえらぶという例年のならわしから離れて、過去十四巻ひきつづいた《年刊推理小説ベスト10》から、それぞれ一篇ずつをえらんで再録し、それに新しく本年度を代表する作品を一篇だけくわえ、《戦後推理小説ベスト15》として諸兄に捧げることにした。

と述べています。

読み終えてみると、どれも平均以上の出来栄えであることは否定しませんが、「これは傑作」と唸るような作品は見当たりませんでした。さすがに、最新作でも60年以上前の作品ですから、経年劣化している部分が少なくないのでしょう。

荒地出版社 1960年9月30日 初版 286ページ 定価300円
わたしの持っているのは、「カバー欠の裸本」ですね。学生時代に購入したものでしょう。