探偵人間百科事典 ( フランク・グルーバー )

楽しく読める作品揃い。職人芸が光ります。


題名 作者 評点 コメント
鷲の巣荘殺人事件 フランク・グルーバー 7.5 山荘での殺人現場に脱獄犯が籠城という舞台設定が面白い。隠された金と犯人の正体を暴き、最終的なケリまでつけるクエイドの活躍はお見事。
ドッグ・ショー殺人事件 フランク・グルーバー 6.0 作品集で一番長い中編。動きは派手だが、いささか冗漫で緊張感が持続しない。
不時着 フランク・グルーバー 7.0 不時着した飛行機で殺されていた機長。生存者がたどり着いた毛皮工場には、ほどなく強盗が乱入..と目まぐるしい展開で退屈させない。。
州博覧会殺人事件 フランク・グルーバー 6.0 クエイドの目の前で男が毒矢で殺される。相変わらずの速い展開だが、事件の動機もわかりにくく今ひとつ。
漫画映画殺人事件 フランク・グルーバー 7.5 ハリウッドの映画撮影上で起きた殺人に巻き込まれたクエイド。この作品では、中々の名探偵ぶりを見せる。
  • 「人間百科事典」と呼ばれるオリヴァー・クエイドと巨漢の相棒チャーリー・ボストンを主人公とする短編5篇を収録。
    どの作品も面白く読めることは間違いありません。クエイドは、自ら「どんな質問にも答えられる」と豪語する知性と、昏倒させられてもひるまないタフさを併せ持つ30年代のアメリカン・ヒーローですが、いつも金銭的に貧窮しているというおかしみがこの作品群の魅力です。ミステリ的には大した謎もなく、行き当たりばったりで解決することも多いのですが、目くじらを立てるのは野暮でしょう。
  • 巻末には各務三郎による「フランク・グルーバー論」と「作品リスト」があり、これも充実した内容になっています。
  • 中々洒落た装丁の本ですが、番町書房の「If Novels」の一巻としてまとめられたもので、今は見かけなくなりました。このシリーズについては、こちらのサイトに刊行作品の一覧があります。
  • 番町書房版の後、講談社文庫に「グルーバー殺しの名曲5連弾」という題名で再録されました。

どちらも絶版のようですが、入手するには、こちらの講談社版が容易でしょう。収録作品、解説に変更はありません。

昭和55年2月15日第1刷発行 307ページ 400円

  • 原書は「BRASS KNUCKLES」で1966年に「SHERBOURNE PRESS, INC.」というLos Angelsの出版社から刊行されています。

全く知らない出版社ですが、383ページ、ハードバッグの立派な本です。序文は、Gruberがパルプ時代の思い出を語った「The Life and Times of Pulp Story」。これはHMMで連載されたようです。

各務三郎の「作品リスト」では、この本の収録作品について、

The Life and Time of the pulp Story 「パルプ小説の時代と生命」大庭忠男訳(ミステリ・マガジン 一九六七年十二月号 一九六八年二月号)長い序文
Ask Me Another 「つぎの質問をどうぞ」岩下吾郎訳(日本版EQMM誌 一九六五年三月号)
Dog Shaw Murder 「ドッグ・ショー殺人事件」 * 本書
Funny Man 「漫画映画殺人事件」 * 本書
Oliver Quade at the Races 「クエイド、馬券を買う」片岡義男訳(ミステリ・マガジン 一九六九月号)
Forced Landing 「不時着」 *本書
Death Sits Down Words and Music
State Fair Murder 「州博覧会殺人事件」 *本書

としていますが、”State Fair Murder”のあとに、”Rain, The Killer”と”Death at th Main”の2作品が掲載されており、全10作の構成となっています。

クエイド物は、まだ5作未読ということなので、これも時間を見て読んでみましょう。

番町書房 昭和52年9月10日 初版発行 282ページ 650円