探偵小説年鑑(1948年版) ( 探偵作家クラブ編 )

戦後初の年鑑にしては今ひとつ。特に大家の作品レベルが低い。


題名 作者 評点 コメント
死恋 木々高太郎 4.0 なんだこれは。これが年鑑の巻頭とはがっかりだ。
予言 久生十蘭 5.0 よくわからん話で、気が抜けます。
丈助の死 大下宇陀児 5.0 単なる実話小説にすぎず、展開がない。
怪奇を抱く壁 角田喜久雄 6.5 筋書きは読めるが、雰囲気が良い。
探偵小説 横溝正史 8.0 やはり正史はモノが違う。
カナカナ姫 水谷準 6.5 新青年傑作選集3 推理編3 骨まで凍る殺人事件で読了
幻想唐草 城昌幸 3.0 これまたよくわからん散文詩
雨夜の事件 海野十三 6.5 猟奇事件の趣向は悪くない。
桃色の食欲 渡辺啓助 6.0 コントとして面白い。
海鰻荘奇談 香山滋 9.0 現代の推理小説(第3巻) ロマン派の饗宴で読了
みささぎ盗賊 山田風太郎 6.5 読みづらくてかなわないが、幻想的な雰囲気は悪くない。

「『探偵小説年鑑』を読む」を始めましょう

現在、日本のミステリに関する年鑑は、講談社から出ている「ザ・ベストミステリーズ」と呼ばれるもので、Wikipediaによれば、

『ザ・ベストミステリーズ 推理小説年鑑』( - すいりしょうせつねんかん)は、短編推理小説の優秀作品を集めたアンソロジー。日本推理作家協会編。毎年7月頃、講談社より刊行される。前身の『探偵小説年鑑』は1948年版から刊行されており、その歴史は60年を超える。

とのこと。文字通り、日本の短編ミステリの集大成とでも言うべき存在でしょう。

さすがに、これを全巻読破するのはとても出来ない相談なので、ここでは「探偵小説年鑑」として出版された下記を対象にしてみたいと思います。

1948年版〜1955年版 『探偵小説年鑑 探偵小説傑作選』岩谷書店(1955年版は2冊)
1956年版〜1959年版 『探偵小説年鑑 探偵小説傑作選』宝石社(1956年版は2冊)


1948年版の内容

序文は乱歩。まず、「探偵作家クラブ」設立目的と活動について、「探偵作家クラブ賞を設け、毎年一回その年度の最高作品を推薦することとし、その第一回として終戦より昭和二十二年末までに発表された最優秀作三種に対して授賞したこと、そして、今ここにクラブ編纂の『探偵小説年鑑』を世に送ること、などがその主なるものであった。」としています。

さて、「探偵小説年鑑」の一巻めである1948年版に掲載された作家は、序文の乱歩を含めて、下記の12名です。山田風太郎(左下)の若さが目立っていますね。

作品のコメントは、先の一覧表に記述しているように、香山滋と横溝正史の作品は光っていますが、有名作家の作品が今ひとつです。
乱歩の序文によると、「本書収録作家は(中略)得票数のもっとも多かったものを収めたが、それには二三の例外がある。」とし、「即ち木々君の『新月』大下君の『柳下家の真理』海野君の『千早家の迷路』は種々の事情により、夫々『死恋』『丈助の死』『雨夜の事件』に変更掲載することになった」としています。そのせいかもしれませんが、いささか不満の残る結果となっています。


附録

下記が掲載されています。

  • 探偵小説界展望
    乱歩の序文によると、渡辺健治(剣次)が書いているとのこと。
    「探偵小説は昭和十五年ころより衰退の一途を辿り、太平洋戦争と共に殆んど全滅の状態となった。」と始め、「終戦より昭和二十二年末まで」の動きを解説しています。
  • 探偵作家名鑑
    下記の順に記載されています。
    ①本名②現住所③出生地・出生年月日④学歴⑤職業⑥処女作・発表年度・誌名⑦代表作
    乱歩や正史の住所までわかるぞ(笑)。
  • 探偵小説関係雑誌名鑑
  • 邦訳欧米探偵小説目録 古澤仁編

岩谷書店 昭和二十四年一月二十日印刷 昭和二十四年一月二十五日発行 定価百八十円 322+36(『邦訳欧米探偵小説目録』の横書き部分)ページ