探偵小説年鑑(1956年版 上巻) ( 探偵作家クラブ編 )

未読の作品の出来が今ひとつ。大坪も香山も輝きは失せてしまった。


題名 作者 評点 コメント
月と手袋 江戸川乱歩 5.0 [オール読物 昭和30年4月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。
娘たちは恐い 大下宇陀児 3.0 時代遅れの風俗物。まあ大家の顔見せにしても、もう少しマシな作品はなかったのか。
クレイ少佐の死 大河内常平 7.5 [宝石 昭和30年12月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。
白い文化住宅 大坪砂男 4.0 妻の死体を始末した男とその愛人の対決。と言っても何の緊張感のない展開にがっかり。
鯉幟 香住春吾 8.0 [昭和30年5月]宝石推理小説傑作選2で読了済。
風船売り 香山滋 5.0 膨らみのない幻想譚。香山の空想力も枯渇したか。
遣花 木々高太郎 3.0 夫人を亡くした男とその親友。結局何を書きたかったのだろう。
東京暴力団 島田一男 5.0 日活もびっくりのアクション活劇。
波の音 城昌幸 6.0 [昭和30年4月宝石]現代の推理小説(第3巻) ロマン派の饗宴で読了済。
死せるものよみがへれ 高木彬光 7.0 さすがに高木。単なる愛人絡みの事件と思わせておいて、ラストでひねるところはうまい。
  • 序文は木々高太郎が書いています。今年も非常に短いもので、『年鑑は作品ばかりのものではないが、なんといっても作品が第一でなければならぬ。今年のこの集が幸いに読者の好評を得ればと希望している。』とのこと。
  • 残念ながら、その希望に添えず、ただ名刺代わりに年鑑参加のような作品も散見、あまり楽しい読書とは言えませんでした。
  • しかし、「クレイ少佐の死」、「鯉幟」など、将来的にアンソロジーに取り上げられるような作品が4篇もあるのですから、その点は評価せねばなりません。下巻にも期待しましょう。

附録

  • 探偵小説界展望 大河内常平
    ここまでの担当は渡辺剣次でしたが、今年は大河内常平が担当しています。

宝石社 昭和三十一年八月十日印刷 昭和三十一年八月十五日発行
定価 二百八十円 380ページ