探偵小説年鑑(1956年版 下巻) ( 探偵作家クラブ編 )

盛り上がりに乏しい作品ばかりで、いささかがっかりの一巻でした。


題名 作者 評点 コメント
二月の悲劇 角田喜久雄 6.0 因果話だが、うまい構成で読ませる。ただミステリとしての面白さはない。発狂者
狐の鶏 日影丈吉 3.0 暗く貧乏くさい話を延々読まされるのにはうんざりする。
サムの東京見物 水谷準 7.0 地下鉄サムが東京にやってきたという設定が笑わせる。乱歩や正史を思わせる人物まで登場させられるのは水谷準だけだろう。
ノイローゼ 山田風太郎 5.0 先夫の死を巡る夫婦の葛藤だが、ラストのオチが空回り。
廃園の鬼 横溝正史 6.0 屋上の殺人シーンを目撃する場面など、さすがにうまいが、解決があまりに場当たり的で説得力がない。
文殊の罠 鷲尾三郎 7.5 [宝石 昭和30年1月]現代の推理小説(第1巻) 本格派の系譜で読了済。
クレオパトラとサロメ 渡辺啓助 5.0 題材は面白いのに全く活かしきれていない。この作家の限界だろう。

上巻のコメントで、「下巻にも期待しましょう。」と書いたのですが、残念ながら未読の作品は、ぱっとしない作品が多くあまり盛り上がりませんでした。まあ、ここまで戦後の作品もかなり読み進んできていますから、出来の良い作品は既読状態になっています。この巻で言えば、鷲尾三郎「文殊の罠」がそうですね。それを考えると、このような感想になってしまうのも、致し方ないのかもしれません。


附録

  • 昭和三十年度作品目録 中島河太郎
    「創作」「翻訳」「評論随筆」「単行本」と4つのセクションに分類されています。
    「単行本」の翻訳分野で、早川書房のポケットミステリが多数を占めているのは頷けるのですが、日本物では、東方社から大量に出版されていることに驚きました。貸本向けなのでしょうか。
  • 探偵作家住所録

宝石社 昭和三十一年八月二十日印刷 昭和三十一年八月二十五日発行
定価 二百五十円 338ページ