新青年傑作選集1 推理編1 犯人よ、お前の名は? ( 中島河太郎編 )

古さを感じる作品が多い中、横溝正史は飛び抜けたレベルだった。


題名 作者 評点 コメント
永遠の女囚 木々高太郎 5.5 [昭和13年11月号] 展開は悪くないが、ラストがよくわからない。
家常茶飯 佐藤春夫 4.0 [大正15年4月号] 傑作選に載るような話とは思えない。
変化する陳述 石浜金作 4.0 [昭和3年4月号] 古臭くて、もはや読むに耐えない。
月世界の女 高木彬光 6.5 [昭和24年9月号] 再読なので正しい評価ができないのだが、筋書きは丸見えではないか。
彼が殺したか 浜尾四郎 6.0 [昭和4年1、2月号] 重苦しい雰囲気に押される。ただ、この感性は現代の人間には通じないなあ。
印度林檎 角田喜久雄 7.5 [昭和22年2月号] さすがに一流作家は違う。適切な長さの中で、意外性のある結末。モダンである。
蔵の中 横溝正史 8.0 [昭和10年8月号]ディテイルを丁寧に書き込み、盛り上げていく正史の筆力に圧倒される。
烙印 大下宇陀児 5.0 [昭和10年6,7月号] 展開が予想通りで、何の意外性もない。古臭くて長くて辛気臭い。
  • 1977(昭和52)年7/15初版、1979(昭和54)年4/30四版発行、定価380円。裏に値段が書いていないから、新刊で購入したのかもしれない。
  • 扉に「永遠に古くなることのない傑作ばかり集めたファッショナブルなこの<「新青年」傑作選>で、あなたは時の立つのも忘れてしますでしょう。」とあります。本当かあ(笑)。
  • 「良い作品は時代を感じさせない」と言いますが、それは非常に難しい。よほど、しっかりした世界感を持っている作家のみに許される言葉です。
  • 「古くなる」というのは、その時代の「新しさ」、「はやり」に頼りすぎているせいではないか、という気がします。少し一面的な見方かも知れませんが、このような作品は時間の経過とともに、自動的に古くなってしまう。
  • また、最初から「古い」とそれ以上は古くなりません。クラシックなミステリや、時代劇はそんな感じですね。逆に、その時代の風俗に重きを置いた社会派ミステリやドラマは、劣化するスピードが速い、そういうことかもしれません。
  • 「新青年傑作選」を読むことを始めたのを少し後悔しています。当たり前なのですが、全体的に古臭い。大下宇陀児が過去の作家になっている理由も、今回よくわかりました。