新青年傑作選4 翻訳編 ( 監修松本清張 横溝正史 水谷準●責任編集中島河太郎 )

良くも悪くも時代を感じさせる作品が多い。


題名 作者 評点 コメント
マイナスの夜光珠 ビーストン/西田政治訳 7.0 [大正10年8月増刊]宝石を埋め込まれた職人の意外な正体が面白い。
葬式フランク ランドン/森脇萬訳 5.0 [大正11年11月]お涙頂戴風の結末が古臭い。
サムの新弟子 マッカレー/訳者不明 7.5 [大正12年1月増刊]サムに弟子入りをはかる男とのやり取りと、ラストのオチが楽しい。
或る精神異常者 ルヴェル/田中早苗訳 6.0 [大正12年8月]アイディアは面白いが、ラストは予想できる。
生さぬ児 ルヴェル/田中早苗訳 5.0 [大正15年4月]ただ残酷なだけの話。ルヴェルは、続けて読むと気分が悪くなる作家。創土社で読んだとき、そう感じたことを思い出す。
撓ゆまぬ母 オーモニア/妹尾韶夫訳 6.0 [大正13年11月]くすっと笑ってしまう話。こういうのが20世紀初頭のイギリス風ユーモアなのかもしれない。
砂嚢 オルチー/延原謙訳 5.0 [大正14年8月増刊]何のひねりもない話。
怪我をする会 ウッドハウス/梶原信一郎訳 5.0 [昭和2年1月]ちょっと苛つく話。
ルウフォック・ホルメスの冒険「火葬にされた男の帰宅」 カミ/平林初之輔訳 7.0 [昭和2年2月]インク壺のイメージが目に浮かぶようで、笑わせてくれる。
ルウフォック・ホルメスの冒険「血塗れの細菌」 カミ/平林初之輔訳 5.0 [昭和2年2月]よくわからん。
ルウフォック・ホルメスの冒険「スフィンクスの謎」 カミ/平林初之輔訳 5.0 [昭和2年9月]よくわからん。
ルウフォック・ホルメスの冒険「道化師」 カミ/平林初之輔訳 6.0 [昭和2年9月]こういう話ばっかりなんだな。
砂男 ホフマン/向原明訳 4.0 [昭和2年8月]機械人形に魅入られた男の話。正直どこが面白いのか良くわかりません。
蜘蛛 エーウェルス/浅野玄府訳 4.0 [昭和3年2月増刊]要するに女郎蜘蛛に食われる話だろ。つまらん。
最後の一葉 オー・ヘンリー/浅野玄府訳 6.0 [昭和4年2月]有名な話。
市長室の殺人 フレッチャー/訳者不明 5.0 [昭和4年8月増刊]抜け穴を知っていた老人がいただけの話。
恐ろしき夕刊 フロスト/訳者不明 6.5 [昭和4年10月]一昔前の教科書のような謎解き短篇。
実験魔術師 アルデン/横溝正史訳 6.5 [昭和5年3月]筋書き予想できるが、面白く読めた。
瘋癲病院異変 ポー/田内長太郎訳 6.5 [昭和6年8月増刊]常人か狂人かがよくわからなくなるのが、妙におかしい。
猿の足 ジャコブス/鷲尾浩訳 5.0 [昭和6年8月増刊]オチがわかりません。
死人の村 キップリング/安藤左門訳 6.5 [昭和6年8月増刊]迫力のある描写で読ませる。
意外つづき ブラックウッド/小野浩訳 6.0 [昭和7年2月増刊]この作者にしては穏やかな話。
稀代の美術品 モリソン/妹尾韶夫訳 7.0 [昭和7年8月増刊]宝石盗難にまつわるちょっとしたトリックが面白い。こういう作品に出会うとホッとする。
オスカア・ブロズキイ事件 フリーマン/吉岡竜訳 6.0 [昭和8年8月増刊]倒叙物は何の意外性もないので、面白みに欠ける。
空室 マーキー/伴大矩訳 8.0 [昭和9年4月]この謎は圧倒的だ。解決は少し陳腐かもしれないが、それなりに説得力がある。解説によると事実に基づいているらしい。
幻の扉 ポースト/西田政治訳 7.0 [昭和12年2月増刊]不思議な因縁話と、その裏にあるものが面白い。
絡み猫 ベイリイ/延原謙訳 4.0 [昭和12年6月増刊]何の面白みもない話。
蜜蜂殺人事件 ウィーン/吉野録也訳 5.0 [昭和12年11月]有名なトリックだが、筋書きが陳腐。
完全脱獄 フットレル/植村清訳 6.0 [昭和14年8月増刊]この作品が高く評価される理由がわからない。ネズミ頼みはいかがなものか。「ルパンの脱獄」のほうが数段面白い。
  • 「新青年傑作選」を読むなら、やはり立風書房版を読まないといけません。1巻目から読むつもりだったのですが、目次を見ると乱歩を始めとするおなじみの作品ばかり。そこで、少し趣向を変えて翻訳編から読んでみることにしました。新青年の目玉の一つは翻訳だったわけですから、この選択も悪くないでしょう。
  • 昭和45年1月25日初版。全420ページで、ボリュームたっぷり。一部を除いて珍しい作品が多く、初めて読む作品のほうが多い気がします。
  • 1920年代までの作品ばかりなので、当然時代を感じますが、読むに耐えないような作品はありません。ただ、どうも幻想系の話は個人的に趣味にあいません。
  • 月報には、横溝正史、水谷隼、中島河太郎の対談。新青年編集長時代の話を中島が聞き出している。今回はモダニズムと原稿料の話。