日本ミステリーベスト集成4 海洋編 ( 中島河太郎編 )

山岳物以上に海洋ミステリの層は薄かったようです。


題名 作者 評点 コメント
港がらす 陳舜臣 5.0 [小説エース 昭和44年5月]港で暮らす豪快な女とそのヒモによる宝探し。これのどこがベストミステリーなのだろう。
うたかたの航跡 戸川昌子 5.0 [小説現代 昭和41年2月]同部屋となった皇族を名乗る女との因縁話。これのどこが、以下同文。
戦艦陸奥 山田風太郎 6.5 [面白倶楽部 昭和28年6月]軍人一家の悲劇と戦艦の運命。面白く読めるが、これまたミステリの要素は無し。
オートレック号の秘密 西村京太郎 7.0 [別冊小説新潮 昭和47年1月]フランスから買い取った船上での殺人。動機を最後まで隠しておいたほうが面白かったのに。
黒潮殺人事件 蒼井雄 5.0 [新探偵小説 昭和二十二年七月]現代推理小説体系 第8巻で読了済。
天国は近きにあり 高橋泰邦 7.5 [推理界 昭和四十二年八月]現代推理小説体系 第18巻で読了済。
カロリン海盆 香住春吾 8.0 [昭和二十四年五月 別冊宝石]ミステリーの愉しみで読了済。
H工作船 赤松光夫 5.0 [推理ストーリー 昭和41年6月]対ソ連工作に揺れるオホーツク船での陰謀。よくある話。
海の殺戮 梶山季之 4.0 [別冊小説新潮 昭和42年10月]単なる風俗物。単に海に死体遺棄されただけで海洋ミステリとは言えないでしょう。
貨客船殺人事件 鮎川哲也 6.5 [小説宝石 昭和46年1月]やはり船に似合うのは本格物。大した謎ではないが、楽しく読める。

日本ミステリーベスト集成の第4巻は「海洋ミステリ」。
前回の「日本ミステリーベスト集成3 山岳編」では「山岳ミステリで一冊のアンソロジーを編むのは、無理があったようです。」とコメントしましたが、今回はそれ以上の無理が見えます。ミステリ作家とは言えない赤松光夫、梶山季之まで動員していることでもその限界がわかりますが、その内容自体も海洋ミステリとはとても言えないものでした。

この巻では、高橋泰邦「天国は近きにあり」、香住春吾「カロリン海盆」が軍を抜いて面白い作品ですが、残念ながら既読。
余談ですが、香住春吾の「カロリン海盆」は初出である「別冊宝石(昭和24年 第2巻1号)」で高校時代に読んだことがあります。この号には岡村雄輔「紅鱒館の惨劇」、岡田鯱彦「妖鬼の呪言」も掲載されていて、再生紙と思われる読みづらい活字を追ったものです。なかなか読み応えがあった記憶がありますが、今の老眼ではとても読みきれないでしょうね。

これで「日本ミステリーベスト集成(全4巻)」は終了。全体を見ると、いささか不満の残るアンソロジーだったと言わざる得ません。


徳間文庫 1985年8月15日 初刷 408ページ 520円