日本代表ミステリー選集06 人肉料理 ( 中島河太郎 権田萬治編 )

現代作家の作品が今ひとつ。セレクションに異議ありだ。


題名 作者 評点 コメント
青い枯葉 黒岩重吾 5.0 [宝石 三十五年十二月]倒産寸前の会社にまつわる殺人。登場人物は厭なやつばかりで気が重くなる。
枝から枝へ 多岐川恭 5.0 [小説宝石 四十七年十月]金と欲まみれの男女の話で、好感が持てない。この時代の風俗物はつまらない。
吉備津の釜 日影丈吉 7.5 [宝石 三十四年一月]昔話と現代を結びつける展開がよく出来ている。
共食いーホロスコープ誘拐事件 小松左京 7.5 [小説推理 四十八年九月]誘拐犯が被害者宅に出向くと、家族全員が誘拐されていたという設定が面白い。その後のユーモアな展開とオチに笑う。
殺意の成立 三好徹 6.5 [オール読物 三十七年八月]期待の新人の論文を盗み、殺害までしてしまった男が最後に知るオチが皮肉である。
長い暗い冬 曾野綾子 7.0 [別冊宝石 三十九年二月]北欧(と思われる)を舞台にした背筋が寒くなる話。孤独な親子が哀れである。
私はだれでしょう 川辺豊三 7.0 [別冊宝石新人ニ十五人集 昭和二十七年]少し出来すぎの感はあるが、冒頭の不思議な謎が解けていく過程は面白い。
星盗人 藤本義一 4.0 [別冊小説宝石 四十六年九月]つまらない通俗物。なんでこんな作品が「代表」に入ってくるのだろう。
沼垂の女 角田喜久雄 6.0 [別冊宝石 二十九年十一月]思わせぶりな展開だが、ラストはでいささか腰砕け。
横溝正史 8.0 [宝石 三十年五月]三百年前の一揆伝説と同じ状況で起きた二件の殺人。一見関係がなさそうな事件をうまく結びつけた結末が良い。それ以上にストーリー展開が巧みである。
  • 現役作家の作品は、権田萬治のセレクションではないかと思いますが、どうも趣味に合わない。もう少し良い作品があると思うのですが。
  • こういうアンソロジーを読んでいると、横溝正史のレベルの高さを痛感します。この巻でも飛び抜けて面白い。
  • 解説では、権田萬治が「江戸川乱歩賞受賞作家とその作品」と題し、第一回(昭和三十年)から第二十一回(昭和五十年)までの経過を解説しています。

昭和五十年十一月三十日初版発行 429ページ 定価380円