日本代表ミステリー選集11 えっ、あの人が殺人者 ( 中島河太郎 権田萬治編 )

前半は「えっ、この作品が代表ミステリ」というレベルでしたが、後半に救われました。


題名 作者 評点 コメント
剥がされた仮面 森村誠一 4.5 [小説宝石 四十五年三月]相変わらず何の意外性もないアリバイ崩し。この作者が当時受けた理由がわからない。
犯罪の場 飛鳥高 5.0 [宝石 二十二年一月]13の密室で読了済。
骨の色 戸川昌子 6.5 [小説新潮 三十九年十二月]こういう女性の怖さは女流作家でないと書けないが、ラストにもう一捻り欲しかった。
ガラスの結晶 渡辺淳一 4.0 [小説現代 四十五年十月]生理的に嫌悪感を催すだけで、ミステリー選集に入る話ではないだろう。
黒い鳥 戸板康二 6.0 [小説新潮 三十七年六月]この作者にしては盛り上がりのない平板な展開。
キタタキ絶滅 石沢英太郎 7.5 [推理界 四十五年三月]キタタキという絶滅種を巡る話だが、なんといっても題材が良い。この作家の初期作品を読み返したくなった。
石の塔 清水一行 8.0 [初出不明]子供の事故死とバラバラ死体事件がうまく噛み合って、最後まで一気に読ませる。長編にすればよかったのに、もったいない。
謀殺のカルテ 有馬頼義 7.5 [オール読物 三十四年三月]砒素を飲まされていると友人の医師から告げられた男は、自ら犯人探しに乗り出すが。意外性もあって最後まで面白く読める。
箱の中のあなた 山川方夫 5.0 [ヒッチコック・マガジン 三十六年二月]オチがつまらない。
殺意 高木彬光 7.0 [小説公園 二十七年十一月]法律の裏をついたプロットなのだが、二重になっているところが効いている。
  • この巻では、清水一行の作品の出来が非常に良かったと思うのですが、初出がどこにでも出ていません。どんな経過をたどった作品なのでしょう。
  • 石沢の初期短編は、双葉社で「カラーテレビ殺人事件」としてまとめられた後、講談社文庫に「羊歯行・乱蝶ほか」として収録されました。機会を見て再読してみたいと思っています。
  • 解説では、権田萬治が「<推理>ノート」として日本におけるスパイ小説と冒険小説の系譜について説明しています。

昭和五十一年三月三十日初版発行 429ページ 定価380円