殺人鬼の饗宴 恐怖ミステリー集 ( 中島河太郎編・解説 )

標準以上の作品揃い。楽しく読める怪談集でした。


題名 作者 評点 コメント
縄 編集者への手紙 阿刀田高 7.0 [小説現代 昭和54年4月]縄に追われる恐怖がうまく書かれている。ラストも例のパターンかと思っていたが、少しひねりがあったのが良い。
幽霊試写室 小林久三 6.5 [野生時代 昭和54年8月]別荘で殺害され白骨死体となった映画監督がロケ映像に写り込んでいた。心霊写真かそれとも..。終盤の展開がいまひとつ。
死神は白衣をまとう 菊村到 6.0 [小説宝石 昭和51年11月]入院先で死神を見たという男。結末はわかってしまう。
殺しへの招待 西村京太郎 5.5 [小説現代 昭和53年4月]殺人こそ最高のスリルだという老人を訪問した男が見たものは。これまた結末は予想通り。
髑髏を抱いて寝る男 和久峻三 6.5 [小説現代 昭和54年10月]法廷物。愛人のドクロを持ち歩いていた男は殺人罪で告訴されているのだが..。取ってつけたようなラストが残念。
ダイヤと干し首 胡桃沢耕史 7.0 [問題小説 昭和54年11月]アマゾン奥地の伯父を頼る女。ダイヤ取引の描写と女に同行していた商社マンの行く末が妙におかしい。
蝮人 岩川隆 5.0 [別冊小説宝石 昭和52年8月]不思議な女に惹かれた医師。古臭い。
ヘロデの夜 山田正紀 8.5 [小説現代 昭和53年3月]深夜に産婦人科に担ぎ込まれた女。そこからの展開が秀逸で、これは怖い。
天使は夜訪れる 草野唯雄 6.5 [別冊小説宝石 昭和52年8月]あどけない少年と逢引をする電話交換手。展開は予想できてしまう。
お迎え火 山村正夫 7.0 [小説宝石 昭和54年9月]大学助教時の前に現れてお手伝いの娘。彼女の目的は何なのか。うまくまとまっている。

編者中島河太郎は「はじめに」において、今回のテーマについて下記のように述べています。

現代の社会を直写しようとするミステリーにとって、恐怖こそ根本命題であって、そこに謎も事件も犯罪も謀略も終結する。(中略)その表現や技法には、それぞれの個性が発揮されているが、それらの中から秀作を選んでみた。

選ばれた作品は昭和50年代に中間小説誌に掲載された作品に限定されており、そこに何らかの意図を感じるのですが、それについては特に述べられていません。
全体的に標準以上の作品揃いで楽しく読めますが、その中でも山田正紀の「ヘロデの夜」は出色の出来。「神の子」というのは、本当にこんな形で生まれて来るのかもしれないと思わず戦慄する内容でしたね。


双葉社 昭和56年3月10日 初版発行 285ページ 750円