江戸川乱歩と13の宝石 ( ミステリー文学資料館編 )

全体的に低調な作品が多くうんざり。まあ、「宝石」のレベルなんてこんなものでしょう。


題名 作者 評点 コメント
飾燈 日影丈吉 6.5 [宝石 昭和32年8月]知恵遅れの子守女が赤子を殺したとされる事件。語り口はうまいが、結末は取ってつけた感が強い。
詫び証文 火野葦平 8.0 [昭和三十三年 宝石]13の暗号で読了済。
手紙 宮野村子 4.0 [宝石 昭和33年1月]久しぶりに帰国した男は殺人者なのか。展開が遅く何のひねりもない。
銀の匙 鷲尾三郎 7.0 [宝石 昭和33年6月]田舎の医者宅に居候として住み着く男。いわゆる「奇妙な味」に触発された一編か。
ラ・クカラチャ 高城高 4.0 [宝石 昭和33年7月]天球を翔ける 宝石傑作集5・ハードボイルド・SF編で読了済。
歌姫委託殺人事件 徳川夢声 5.0 [宝石 昭和33年9月]有名な女たらし中村進次郎の話。なぜこれが宝石に載ったのか。
山田風太郎 5.0 [宝石 昭和33年10月]死神は見た 宝石傑作集4・異色推理編で読了済。
処刑 星新一 5.0 [宝石 昭和34年2月]流刑場となった火星に流された男。ラストがピンとこない。
リヤン王の明察 小沼丹 7.0 [宝石 昭和34年4月]ほのぼのとした西洋寓話で楽しく読める。
玩物の果てに 久能啓二 5.0 [宝石 昭和34年10月]美術品への執着を描いた一編だが、ラストが決まっていない。
みのむし 香山滋 3.0 [宝石 昭和35年3月]ミノムシの化身話。あまりにくだらない。
鼠はにっこりこ 飛鳥高 4.0 [宝石 昭和35年10月]何のひねりもない結末にはがっかり。
薔薇夫人 江戸川乱歩 [ 平成19年5月]乱歩がボツにした作品。評価対象ではないでしょう。

 江戸川乱歩が編集していた時代の「宝石」からのアンソロジー。ただ、めぼしい作品は他に掲載されているので、いわば落ち穂拾い、大した作品は残っていませんでした。
帯には『乱歩の未発表小説「薔薇夫人」を初収録!』とありますから、これがウリなのでしょう。


光文社文庫 2007年5月20日 初版1刷発行 483ページ 743円