江戸川乱歩と13の宝石 第二集 ( ミステリー文学資料館編 )

高レベルの作品は既読なので、第二集も低調と思われたが、ラストの佐野洋に救われました。


題名 作者 評点 コメント
粘土の犬 仁木悦子 5.0 [宝石 三十二年十一月]日本代表ミステリー選集04 犯罪ショーへの招待で読了済。
獅子 山村正夫 8.5 [宝石 昭和32年11月]現代の推理小説(第2巻) 本格派の系譜で読了済。
重たい影 土屋隆夫 5.0 [宝石 昭和33年1月]戦場で上官を殺した男二人が企む犯罪。ラストが決まっていない。
ママゴト 城昌幸 4.0 [宝石 昭和33年4月]つまらない話。
これからの探偵小説 対談 松本清張、江戸川乱歩 [宝石 昭和33年7月]
寝衣 渡辺啓助 5.0 [宝石 昭和33年9月]女を覗いていた男は犯罪に気がつく。ラストをもう少しうまくまとめてほしかった。
切断 土英雄 7.0 [宝石 昭和33年9月]誤診に気がついた男は嵐の中連絡に奔走するが..。皮肉なラストは余韻を残す。
泥靴の死神 島田一男 5.0 [宝石 昭和34年4月]おなじみの島田節だが、あまり盛りあがらない。
似合わない指輪 竹村直伸 5.0 [宝石 昭和34年4月]過去の母親殺しを暴く少女。陰気な話。
完全脱獄 楠田匡介 6.0 [宝石 昭和35年3月]復讐心を燃やす男の計画は脱獄し殺人、その後また帰ってくるというアリバイ工作だった。発想は面白いが、オチが今ひとつ。
お墓に青い花を 樹下太郎 6.5 [宝石 昭和35年5月]出世に目がくらんだ男は歌手志望の愛人殺しを企むのだが..。皮肉なラストは良い。
夜明けまで 大藪春彦 7.5 [昭和35年6月]宝石推理小説傑作選3で読了済。
金属音病事件 佐野洋 8.0 [宝石 昭和35年10月]急に記憶力が増すウィルスという設定がまず面白い。その伝染経路が犯罪を呼ぶという筋書きも良く出来ている。

 江戸川乱歩が編集していた時代の「宝石」からのアンソロジー第二集。今回の作品では山村正夫「獅子」が圧倒的な出来なのですが、これはいろいろなアンソロジーに収録されているので当然既読。大藪春彦の「夜明けまで」も同様です。
こういった作品を除いてしまうと、残りは今ひとつ低調でしたが、ラストの佐野洋「金属音病事件」に救われました。急に記憶力が増強する奇病というアイディアがまず面白いですし、それをミステリの中で活かすという作者の力量に感心しました。


光文社文庫 2007年9月20日 初版1刷発行 483ページ 743円