現代の推理小説(第2巻) 本格派の系譜(II) ( 編集委員 松本清張 平野謙 中島河太郎 )

8点以上の作品が、5作という珠玉揃いの一巻だ。


題名 作者 評点 コメント
笛吹けば人が死ぬ 角田喜久雄 6.5 [オール読物 昭和32年9月]悪くはないが、筋書きは予想できる。
脱獄を了えて 楠田匡介 6.5 [宝石 昭和32年11月]脱獄というテーマは面白いが、後半の展開が今ひとつ。
獅子 山村正夫 8.5 [宝石 昭和32年11月]古代ローマを舞台にした陰謀物。意外な展開を含めてよく考えられている。
かあちゃんは犯人じゃない 仁木悦子 7.5 [宝石 昭和33年2月]子供の視点からの描写が斬新で、最後まで緊張感を保っている。
眠りの誘惑 加田伶太郎 8.5 [小説新潮 昭和33年7月]謎解きミステリのお手本のような作品。しかも、しっかりした文章と構成で読ませる。さすが福永武彦である。
不運な旅館 佐野洋 8.0 [宝石 昭和34年6月]倒叙ものと見せながら意外な結末へ持ってゆく手法が効いている。
金魚の裏切り 飛鳥高 7.0 [宝石 昭和34年6月]一生を金魚になぞらえた男が印象に残る。
迷宮事件 中村真一郎 4.0 [小説新潮 昭和34年12月]救いのない冤罪事件。どこが面白いのだ。
加納座実説 戸板康二 6.0 [宝石 昭和35年12月]底の浅い幽霊話。
下りはつかり 鮎川哲也 6.0 [小説中央公論 昭和37年1月]ストレートなアリバイ崩しで、何のひねりもない。
二人の良人 南条範夫 5.5 [宝石 昭和37年1月]二人の夫を巡る話、それだけだ。
方壺園 陳舜臣 8.5 [小説中央公論 昭和37年5月]特殊な建物内の密室殺人と、唐代を舞台にエキゾティズム溢れる設定が相まって素晴らしい出来である。
疲労凍死 新田次郎 8.0 [オール読物 昭和37年8月]迫力ある山岳物。ラストはいささか暗いが、余韻を残す。
鷹と鳶 天藤真 6.5 [増刊宝石 昭和38年1月]結末は予想できるが、展開は面白い。
  • 第2巻は、「本格派」の作品、昭和32年〜37年までの作品を収録しています。
  • 加田伶太郎は「完全犯罪」が最高作だと思いますが、「眠りの誘惑」もそれに迫るレベルの作品です。
  • 山村正夫の「獅子」も素晴らしい。この作家は長いキャリアでしたが、この作品だけ例外的に面白いですね。
  • 陳舜臣の「方壺園」、この作品はもちろんですが、これを収録した短編集全体が素晴らしい出来でした。

1970年12月15日初版印刷 1970年12月20日初版発行 360ページ 780円