現代の推理小説(第4巻) 社会派の展開 ( 編集委員 松本清張 平野謙 中島河太郎 )

この作品集は時代による風化が目立つ。「社会派の限界」というタイトルがふさわしかろう。


題名 作者 評点 コメント
新月 木々高太郎 4.0 [昭和21年5月宝石]実験的な小説なのだろうが、試される方は不愉快だ。
不思議な母 大下宇陀児 5.5 [昭和22年4月ロック]日本代表ミステリー選集02 犯罪エリート集団
罪なき罪 椎名麟三 5.0 [昭和29年2月文芸]辛気臭い話で、気分が沈む。
発狂者 永瀬三吾 4.0 [昭和30年6月宝石]何という陳腐な話。
一年半待て 松本清張 7.0 [昭和32年4月週間読売]虐げられた妻の夫殺しの裏にあるものは。題名が効いている。
淋しい草原に 高城高 7.0 [昭和30年6月宝石]志水辰夫を思わせる作品。釧路の暗い雰囲気は良いが、短編では十分に書ききれていないのが惜しい。
バラ園の共犯者 有馬頼義 4.0 [昭和33年9月別冊文藝春秋]現代では通用しない。筋書きがもろ見えだ。
奇妙な再会 土屋隆夫 7.5 [昭和33年12月宝石]テレビの出会い番組を巡る展開が面白い。
歯には歯を 大藪春彦 6.5 [昭和34年12月宝石]メチャクチャな話なんだが、面白く読ませる作者の筆力に感心する。
ゴウイング・マイ・ウエイ 河野典生 3.0 [昭和34年12月宝石]全くつまらない。大藪と比べると、作家としての資質の違いを痛感する。
恐山 渡辺啓助 5.0 [昭和35年2月宝石]中盤が冗漫で退屈。少し刈り取ったら面白くなったのに。水谷準が編集長ならそうしていたろう。
飛田ホテル 黒岩重吾 4.0 [昭和36年4月別冊文藝春秋]底辺にいる人間のさもしい行動には嫌悪感しかない。
少女と血 新章文子 5.5 [昭和37年11月宝石]姉を亡くした妹の不思議な能力を暗示しているのだろうが、ピンとこない。
佳人薄命 曾野綾子 6.5 [昭和37年11月オール読物]知恵遅れの美女を巡る人間関係が面白いが、少し長すぎてまとまりがない。
越後つついし親不知 水上勉 6.0 [昭和38年1月別冊文藝春秋]作者の筆力には感心するが、救いのない悲惨な話を読むのは苦痛である。
  • 最終巻は、個人的に嫌いな分野の作品が多くて、厳しい評価となってしまいました。
  • 小説を読む楽しさは、ある意味で「現実逃避」と思うのですが、社会派の作品は、その楽しさをスポイルしているような気がしてなりません。小説の中でまで、厳しい現実を見せつけられて、何が楽しかろう。