続・13の密室 ( 渡辺剣次編 )

「13の密室」続編。さすがにレベルは落ちますが、楽しく読めます。


題名 作者 評点 コメント
何者 江戸川乱歩 8.0 [昭和四年十一〜十二月 時事新報]乱歩の本格物では、この作品が一番の出来だろう。謎の設定と動機の意外性などよく出来ている。
抗鬼 大阪圭吉 8.5 [昭和十二年五月 改造]舞台設定、意外な犯人、動機の妥当性と三拍子そろった秀作。圭吉の作品では「三狂人」に続く出来。
赤いネクタイ 杉山平一 6.5 [昭和二十三年 新探偵小説]事件の概要がぼんやりとしか書かないので、トリックの面白さがスポイルされてしまった。
密室の魔術師 双葉十三郎 6.0 [昭和二十三年一月 黒猫]短い中に密室殺人をうまく構成しているが、トリックも犯人もミエミエなのが残念。
密室のヴィナス 渡辺啓助 4.0 [昭和二十三年 ミステリイ]脈略ののない展開で冗漫。
二重密室の謎 山村正夫 5.0 [昭和二十四年二月 宝石付録]全体的にストーリーの盛り上がりに乏しく、どこが二重密室なのか謎の輪郭もはっきりしない。
妖婦の宿 高木彬光 8.5 [昭和二十四年五月 宝石]探偵小説年鑑(1950年版)で読了済。
「罪ふかき死」の構図 土屋隆夫 5.0 [昭和二十四年 別冊宝石]筋書はすぐわかるし、トリックも面白くない。
妖女の足音 楠田匡介 7.0 [昭和二十七年三月 宝石]冬の山荘の雰囲気も悪くないし、足跡トリックも面白い。
みかん山 多岐川恭 7.5 [昭和二十八年 別冊宝石]登場人物像がうまく書かれていて、展開がスムーズ。作者の力量を感じる。
明日のための犯罪 天城一 7.5 [昭和二十九年四月 宝石]クスクス笑ってしまうようなトリックが効いている。
水色の密室 斎藤栄 7.5 [昭和四十五年 推理]密室トリックは少し唖然とするが、浪人生探偵の語り口の面白さと相まって、逆に効果的である。
大密室 佐野洋 8.0 [昭和四十六年 オール読物]暗闇の部屋に閉じ込められた男女。救出されたときには女が殺されていた。事件は明白のように思えたが..。ラストの捻りを含めて面白く読める。
  • 13の密室の続編アンソロジー。さすがに前作のレベルからは落ちていますが、中々の作品揃いです。
  • 私見ですが、前作と本作の作品を下記のように入れ替えると、真の密室傑作アンソロジーになるかもしれません。
    江戸川乱歩「火縄銃」→「何者」
    大阪圭吉「石塀幽霊」→「抗鬼」
    高木彬光「影なき女」→「妖婦の宿」
    佐野洋「大密室」追加

講談社 第1刷発行 昭和51年6月28日 320ページ 980円