緑色の犯罪 ( 甲賀三郎 )

一定のリーダビリティはあるものの、ミステリとしてはどれも平均止まり。ぱっとしません。


題名 作者 評点 コメント
ニッケルの文鎮 甲賀三郎 7.0 女性の一人称で語られる撲殺事件。怪盗「無電小僧」という名に時代を感じるが、よく考えられている。
悪戯 甲賀三郎 5.0 将棋対局間に好敵手を殺した男の苦悩。ラストが今ひとつ。
惣太の経験 甲賀三郎 6.0 惣太のキャラで読ませるシリーズ物なのだろう。悪くない。
原稿料の袋 甲賀三郎 6.5 探偵作家が巻き込まれる殺人劇はそれなりに読ませるのだが、結末は別事件との辻褄合わせ。今回は怪盗「葛城春雄」が出てきたぞ。
ニウルンベルクの名画 甲賀三郎 6.0 弁護士手塚物。目まぐるしく展開するストーリーは少し盛り込みすぎ。
緑色の犯罪 甲賀三郎 6.5 これも手塚物。緑色の執着する作家という設定は面白いが、赤の警告板という部分でトリックはわかってしまう。
妖光殺人事件 甲賀三郎 5.0 当時は新味のある設定だったろうが、今となってはあまり面白くないし、トリックも陳腐。
発声フィルム 甲賀三郎 6.0 今でいうビデオテープを発明して殺人に用いた博士の話。特許でも取って大儲けすればよかったのにね。
誰が裁いたか 甲賀三郎 5.5 毒ガストリックは陳腐だし、小説的にもスッキリしない出来。
羅馬の酒器 甲賀三郎 6.0 すごい毒殺トリックである。ローマの時代にこんな競技があったのか。
開いていた窓 甲賀三郎 6.5 小品ながら、うまくまとめた作品。
  • 新青年など戦前作品のアンソロジーを読んでみて、甲賀三郎の作品、特に「琥珀のパイプ」、「二川家殺人事件」などは、なかなかの出来なので、今回は国書刊行会の短編集「緑色の犯罪」を読んでみました。
  • 少し期待していたのですが、残念ながらこの作品集、それなりに読ませるのですが、平均点以上の出来の物が見当たりません。特にミステリとしては、ラストの意外性、ひねりというものが全く見られないので、平板な印象しか残りませんでした。
  • 甲賀はドイルを手本にしていたようで、その影響かホームズ物によくある読者が知りようのない過去の事件と関係づけるパターンが散見されます。ホームズが急に「ワトソン君、君は3年前のXX事件を覚えているかい?」なんて言い出すやつですね。
    結局、ドイルの作品はミステリとしては大したものではなく、ホームズのキャラクタに支えられているストーリーなのですが、残念ながら甲賀の作品にはそのあたりの魅力に乏しく、平均以上の評価になりえません。
  • 過去の事件といえば、時々変な怪盗が出てくるのも、甲賀の作品によくあるご愛嬌のようです。怪盗「無電小僧」のネーミングには時代を感じますが、「原稿料の袋」に出てくる怪盗が「葛城春雄」、フルネームなのが妙におかしい。こやつ現場に住民票でも置いてきたのか(笑)。
    この葛城さんですが、解説によると色々な作品に顔を出すお馴染みさんとのこと。もう少し読んでみたい気もしますが..、まあ、出来は予想できますけどね。