裸で転がる ( 鮎川哲也 )

盛り上がりに乏しい作品ばかり。うんざりしました。


題名 作者 評点 コメント
死に急ぐもの 鮎川哲也 5.0 [別冊文春 昭和38年1月]終盤の展開があっけなさすぎる。
笹島局九九〇九番 鮎川哲也 4.0 [エロチック・ミステリー 昭和38年1月]犯罪実話のような展開で盛り上がりがない。
女優の鼻 鮎川哲也 6.5 [週刊新潮 昭和38年1月7日]女優の首切り死体と自殺事件。ちょっとしたつながりが面白い。
裸で転がる 鮎川哲也 6.0 [小説中央公論 昭和38年2月]前半の飲み屋のやり取りが、事件に全く関係ないのは如何なものか。
わるい風 鮎川哲也 5.0 [オール読物 昭和38年5月]倒叙物はつまらない。
南の旅、北の旅 鮎川哲也 6.5 [小説現代 昭和38年7月]決め手になった言語錯覚が面白い。
虚ろな情事 鮎川哲也 6.5 [推理ストーリー 昭和38年9月]罠にはまった男の部下派が真犯人を追う。犯人の見当はついてしまう。
暗い穽 鮎川哲也 4.0 [オール読物 昭和38年2月]浮気をネタにゆすりを働く男を絞殺した男だったが。つまらない話。

鮎川哲也の短篇は、昭和29年「探偵実話」に書かれた「赤い密室」には非常感心しましたし、乱歩が編集長に就任した32年以降、「宝石」に掲載されたミステリにも、力作が多かったように記憶しています。ただ、その後の作品には未読が多いので、今回角川文庫版の「名作選」を手に取ってみました。この作品集「裸で転がる」には昭和38年に発表された8篇が収められています。
さて、読み終わってみると、

つまらない作品ばかりで、がっかり。

社会派全盛当時の風潮に合わせたような作品や、ただ犯罪をなぞっただけのものが多く、小説としての面白みや、ちょっとしたひねりや意外性もありません。このような日常社会におけるちょっとした犯罪を描かせると、作家としての筆力が露呈してしまうのでしょう。この少し前に、松本清張の短編集を読んでいたのですが、「清張が軽く流した作品にも遠く及ばない」というのが正直な感想です。

角川文庫 昭和五十三年十月十日初版発行 昭和五十五年六月二十日三版発行 340円 328ページ