金貨の首飾りをした女 ( 鮎川哲也 )

意外性のない倒叙物やアリバイ崩しはつまらない。盛り上がらない一巻。


題名 作者 評点 コメント
井上教授の殺人計画 鮎川哲也 4.0 [週刊新潮 昭和41年2月12号]倒叙物。皮肉な結末の小品。
扉を叩く 鮎川哲也 3.0 [小説現代 昭和41年5月]倒叙物。アリバイが崩れる理由がつまらない。
非常口 鮎川哲也 3.0 [漫画読本 昭和41年6月]倒叙物。これまたつまらない理由で犯行がわかるという話。
ブロンズの使者 鮎川哲也 7.0 [推理小説研究 昭和41年7月]盗作事件をめぐる殺人事件。伏線もうまく引いている。
北の女 鮎川哲也 6.0 [小説現代 昭和41年8月]地名と人名を混同させるトリックはこの作者のおなじみ。
金貨の首飾りをした女 鮎川哲也 4.0 [別冊宝石 昭和41年8月]展開がゴタゴタしているうえ、アリバイはあまりに作り物めいていて説得力に乏しい。
夜を創る 鮎川哲也 5.0 [小説現代 昭和42年1月]オチがわかりにくい。
夜の散歩者 鮎川哲也 7.0 [推理界 昭和42年7月]本巻唯一のパズラー。盲人が出てきた段階でなんとなく趣向に見当がつく。

 久しぶりに角川文庫の「鮎川哲也名作選」を読んでみました。この巻は、昭和41年から42年にかけての短編を集めたもの。

 前回の「死が二人を別つまで」の感想で、

この時期の鮎川の短編では、犯人と犯行手段が最初から描かれている、いわゆる「倒叙物」が増えています。実は、個人的にこの形式が大嫌いなのです。短編ミステリの面白さは、ちょっとしたヒネリを含めた意外性にあると思うのですが、「倒叙物」という形式は、どんな素晴らしいトリックが考案されていようと、最初からその面白さを大半放棄しているからです。

と書きましたが、今回もそれを再認識しました。


角川文庫 昭和53年11月30日初版発行 昭和56年8月30日四版発行 320ページ 340円