13の凶器 ( 渡辺剣次編 )

「凶器」というテーマではセレクションに限界があったのでしょう。「暗号」同様ぱっとしません。


題名 作者 評点 コメント
夢遊病者の死 江戸川乱歩 5.0 [大正十四年 苦染]夢遊病者の思い込みを描いた話だが、何の意外性もなくつまらない。
ネクタイ難 堀辰雄 4.0 [昭和五年 新青年]堀辰雄が書いたのが珍しい。それだけだ。
デパートの絞刑史 大阪圭吉 5.0 [昭和七年 新青年]機械的トリックには興味が持てない。
点眼器殺人事件 海野十三 5.0 [昭和九年 富士]海野得意の脱力するバカミス。絞殺の謎解きがすごい。
鉄管 大下宇陀児 5.0 [昭和十一年 サンデー每日增刊号]予想通りの展開で盛り上がらない。
債権 木々高太郎 5.5 [昭和十二年 探偵春秋]すべてを債権に置き換えるという奇癖を持つ男が殺される。とってつけたような結末が残念。
密室殺人 妹尾アキ夫 5.0 [昭和十二年 新青年]実話をベースにした話なのだろうか。犯人が突然明らかになるなどミステリとしては破綻している。
涅槃雪 大坪砂男 7.5 [昭和二十四年 宝石]探偵小説年鑑(1950年版)で読了済。
氷川瓏 6.5 [昭和二十六年 宝石]探偵小説年鑑(1952年版)で読了済。
氷山 狩久 7.0 [昭和二十六年 別冊宝石]毒殺トリックと日記による展開がうまくマッチしている。
凶器 松本清張 6.0 [昭和三十三年 週刊朝日]田舎を舞台にした殺人事件。さすが清張面白く読ませるが、トリックは明らかに「ダールの作品頂き」なので高い評価は出来ない。
九雷渓 陳舜臣 8.0 [昭和三十七年 小說中央公論]戦前の中国を舞台に、死を待つ詩人の運命と将校の謎の死がうまく描かれている。この作者ならではの作品。
剣の欛 都筑道夫 5.0 [昭和四十二年 推理界]いろいろ舞台に工夫をしているが、謎そのものがつまらない。
  • 「13」シリーズの第3編。今回は「凶器」をテーマとしていますが、前回の「13の暗号」同様、あまり印象に残る作品はありませんでした。
  • その中にあって、陳舜臣の作品は光ります。「九雷渓」は、中央公論社から出た短編集「方壺園」という作品集に収録されていますが、これ以外に、表題作の「方壺園」、「梨の花」、「獣心図」など、素晴らしい作品揃いでした。日本ミステリー有数の短編集でしょう。
  • さて、このアンソロジー「13シリーズ」ですが、編者の渡辺剣次がこの年(1976年)急逝したことで、この後の「続・13の密室」をもって終了することとなります。

講談社 第1刷発行 昭和51年3月8日 258ページ 850円