中町信を読む ( その2 )

6作目からの5冊も秀作揃い。中町ワールドを堪能できます。


 「中町信を読む(その1)」からの続きです。


(6) 散歩する死者(中町信)(1982)

良く考えられた展開に感心した。初期の作品は読ませる。 (2008/09/05)

この作品も秀作。落ち目の推理作家の持ち込み原稿が未解決の殺人事件を描いたもの、と気がついた女性編集者が背景を調べ始めるのが発端。更に関係者が次々と亡くなっていくという目まぐるしい展開で快調に進みます。いささか人が死にすぎるきらいはありますが、一旦集約されたと思われた結末から、さらにひとひねり加えるところなど良く考えられています。

徳間文庫 1989年10月15日 初刷 315ページ 480円
創元推理文庫から「天啓の殺意(2005年4月)」というタイトルで復刊されています。


(7) 田沢湖殺人事件(中町信)(1983)

意外性を狙った作品だが、最後は少しわかってしまう。 (2008/09/16)

すっかり内容を忘れていたので再読。15年前に起きた事件をめぐる連続殺人事件ですが、この作品も人が次々と死んでいくので慌ただしく落ち着きません。ここまで複雑な展開にせず、裏に隠された真の動機を中心にまとめていたら、すっきりとした出来になったように思うのですが、今回の趣向はいまひとつ決まりませんでした。


徳間文庫 1990年7月15日 初刷 317ページ 480円


(8) 奥只見温泉郷殺人事件(中町信)(1985)

犯人の設定とナレーションがよく考えられている。さすが中町だ。 (2013/08/19)

この作品、中町のベストかもしれません。数カ所挿入されている夫を疑う女性のモノローグ、過去の事件との関連性に関する記述トリック、それに加えて今回は犯人の設定もよく考えられているので、中盤から一気に盛り上がります。ただ、この程度の動機で連続殺人を行うというのは現実離れしていますが、これも中町ワールド、大目に見ておきましょう。

徳間文庫 1991年6月15日 初刷 376ページ 540円


(9) 十和田湖殺人事件(中町信)(1986)

なかなかの佳作。少し本を集める気になった。 (2008/02/05)

プロローグは墜落寸前の飛行機内でのやり取りですが、これはなかなか効果的で一気に物語に引き込む魅力があります。事件はある溺死事件と女性の殺害事件。ここから話が進んでいくのですが、何かに気がついた人物が捜査直前で次々と殺されていくという派手な展開なのですが、これはやり過ぎ。作者のサービス精神には感心しますが、いささか食傷気味になります。犯行の動機がなかなか面白いのですから、このあたりをベースに、もう少し単純な構成にしたほうが良かったと思います。

この本が岡山の万歩書店まで「中町信ハント」に出向くきっかけになったわけですから、決して悪い出来ではありません。

徳間文庫 1992年3月15日 初刷 382ページ 540円


(10) 榛名湖殺人事件(中町信)(1987)

ストーリー展開が平板で意外性もない。 (2014/08/23)

初読時の感想は上記なのですが、今回再度読み直してみると、いやいやなかなか良く考えられた作品で、ラストの2転3転するラストまで楽しく読むことが出来ました。
まあ、「真相を見抜いた人物が次々に殺されていく」という相変わらずの展開は、いささかマンネリ気味なのですけど。

徳間文庫 1993年1月15日 初刷 313ページ 500円

「中町信を読む(その3)」