中町信を読む ( その3 )
レギュラー探偵の登場とマンネリ気味の設定には、いささかうんざり。
「中町信を読む(その2)」からの続きです。
(11) 悪魔のような女(中町信)(1988)
途中まではそれなりに読ませるが、自分でネタバレしてどうする。 (2008/08/18)
勁文社文庫 1990年4月15日 第1刷
(12) 佐渡金山殺人事件(中町信)(1988)
殺人ばかり起きるだけで一貫性もなく、展開もつまらない。 (2022/08/22)
素人探偵、氏家周一郎初登場作品です。その後の作品全体に言えることですが、レギュラー探偵を設定したことは大きな失敗でしょう。
勁文社文庫 1990年10月15日 第1刷
(13) 阿寒湖殺人事件(中町信)(1989)
やたら人が殺されるだけで緊張感のない展開。初期の切れ味がない。 (2023/02/27)
これも氏家周一郎物。プロットそのものが平凡で、人が次々と殺される不自然さだけが目立つ作品。中町の長所が全く出ていませんね。
徳間文庫 1994年2月15日 初刷
(14) 四国周遊殺人連鎖(中町信)(1989)
よく考えられたプロットなのだが、少し複雑すぎて後半バタついてしまった。氏家夫妻を探偵役にしてから緊張感に欠ける。
勁文社文庫 1991年10月15日 第1刷
(15) 山陰路ツアー殺人事件(中町信)(1989)
未読
これも氏家周一郎物のようです。題名から推察すると、またツアーでの連続殺人なのでしょうね。
(16) 下北の殺人者(中町信)(1989)
事件に一貫性がなく、つじつま合わせのような結末にがっかり。
今回もツアーでの連続殺人事件。このところの作品は、全て同じ設定でうんざりします。
講談社文庫 1994年1月15日 第1刷発行
上記の作品が書かれた1988年あたりで、中町は専業作家への転身を図り、より読者に受ける作品を目指したと思われます。その一つが、当時流行していた西村京太郎のトラベルミステリのような要素を入れること、そして解決役としてレギュラー探偵を登場させることだったのでしょう。
しかし、この方向性は自らの長所を消し去ってしまう悪手だったのではないでしょうか。中町作品の特徴は、事件を複数の登場人物の視点から描き、そこからひねりを効かせて意外な展開に持ち込むことにあるのですが、レギュラー探偵の登場により視点が固定化されてしまい、その魅力をスポイルさせる結果となってしまいました。また、ツアーに参加した人物が次々に殺されていく、というワンパターンな展開はあまりに安易と言わざる得ません。
以後の作品リストを見ても余り触手がわきませんし、手持ちの作品も少なくなりましたので、「中町信を読む」はここで終了とします。