大密室 幻の探偵小説コレクション ( ピエール・ボアロー、トーマ・ナルスジャック )
「このトリックは酷い!! 本格推理ファン唖然」
ボアロー、ナルスジャックは、合作で有名な作家チーム。1952年の「悪魔のような女」をはじめとした作品は、日本でも多数翻訳されています。詳細は、ウィキペディアを参照してください。
彼らの小説は、いわゆるスリラーと呼ばれるものですが、合作が始まる前に単独で書いていた作品は、古典的なミステリだったようです。この作品集では、ピエール・ボアローとトーマ・ナルスジャック、それぞれの作品が一作ずつ収録されています。
正直言って、彼らの作品を面白いと思ったことがないのですが、「大密室 幻の探偵小説コレクション」という題名と、帯で「このトリックは凄い!! 本格推理ファン垂涎」と煽られては仕方がない。まあ、読んでみましょうか。
三つの消失(1938) : ピエール・ボアロー
ショーミニイ城館の城主、ジルベエル・ド・モンセル伯爵は美術収集家として有名で、自らのコレクションを、広く一般に公開することを生きがいにしていた。画廊では、案内人のマニュエルが、毎回訪問客に説明を行うのだが、最後に声を高めるのが、レオナルド・ダ・ヴィンチの「バッカスの憩」の紹介なのであった。
1番目の消失
その日、いつものように「バッカスの憩」の説明をしていたマニュエルに、ブラ・ルーレという名の暴漢が襲いかかる。彼はマニュエルを特製の凶器で撲殺したうえ、逃走をはかるのであるが、城館の守衛に取り押さえられてしまう。
それを確認後、モンセル伯爵は「バッカスの憩」に駆け寄るが、名画は忽然と消え失せてしまっていた。しかし、強奪犯と思われたブラ・ルーレだが、彼は絵を持っていなかったのである。名画「バッカスの憩」は、どこに消えてしまったのだろうか。
2番目の消失
その一週間後、城館に再度強盗が入る。憲兵が警戒に当たっていたのだが、彼は侵入者に縛り上げられてしまう。侵入者は、「バッカスの憩」を思わせる大きさの荷物を抱えたまま逃走をはかるのだが、なんとか縛めを解いた憲兵の反撃にあい、退路を断たれたように見えた。ところが、侵入者は目の前にある塀を透明人間のようにすり抜け、逃亡してしまうのであった。
3番目の消失
黙秘を貫いているブラ・ルーレであるが、その公判は滞りなく進んでいた。最終的に有罪判決を受けたブラ・ルーレは、法廷から監獄へ送られることになったが、その囚人護送車がその道中で、消え失せてしまったのである。
名画の行方は...
事件発生から半年以上経過したある日、モンセル伯爵にある男が接触してくる。彼こそが絵画強奪の主犯で、百万フランで絵を返すというのだ...
絵画は無事に帰ってくるのであろうか。また「三つの消失」事件の真相は..
さて、最後まで読み終わると...
がっかりします(笑)。
まず、ストーリーは平板なうえ、話の展開に何の捻りもありませんから、読んでいてつまらない。要するに、小説としてだめなのです。結局、消失トリックだけが売りなのでしょうが、どれも大した出来ではなく、第三の消失なんて、全くわけがわかりません。どうしようもないなあ。
死者は旅行中(1948) : トーマ・ナルスジャック
さて、次はナルスジャックの出番である。
なんとかしてくれよ、相棒の不調法をカバーしてくれ。
と、一縷の希望を託して読み始めましたが...
舞台は船である
主人公の私こと、ジル・サン=タボルドは、街でグラディス・エバーハートという娘と知り合い、白鯨号という船に招待される。白鯨号のオーナーは、ジルの父チャールズ・エバーハートで、彼は船内に多数の美術品を収集しており、それをサロンに陳列していた。船内にはチャールズの弟、美術鑑定家、秘書などが乗り込んでいた。
ジルは、現在夫と離婚係争中で、行動を見張られており、殺害までも計画しているようだと訴える。実際、二人の出会いをスナップを撮った写真屋が襲われ、フィルムを盗まれるという事件が起きていた。
その日はあいにくの悪天候、その嵐の中で難破した船から、コールドウェルという青年が救助される。彼は、胸をナイフで刺されていたが、幸い傷は浅かったようだ。一体、この男は何者なのだろうか。
そして事件は起きる...
翌日、グラディスとサン=タボルドは、隣室のバッジ教授が何者かと口論しているのを聞く。慌てた二人はチャールズを呼び、ドアをこじ開けて部屋に入ってみると、室内には大量の血溜まりがあり、そこには短剣が放置されていた。しかし、室内には、被害者も加害者も見当たらない。一体、彼らはどこに消えてしまったのだろうか。短剣はサロンにあったものであった。そのサロンでは、美術鑑定家のクランツが拘束されていた。
さらに、事件は続発する。サン=タボルドまでも頭を殴られ、昏倒してしまう。そして、船内にはペスト患者まで発生してしまったという...
さて、最後まで読み終わると...
がっかりします(笑)。
それ以前に、読み終わるということ自体に苦労します。要するにつまらない。おまけに犯人はソ連のスパイだって。脱力しました。
晶文社 1988年5月20日初版 1988年7月20日二刷 458ページ 定価2580円
2001年9月にAmazon.co.jpにて、新刊で購入した模様。Webを検索していて見つけたようです。あれから20年近く放置していたようですが、そのままにしておいたほうが良かったですね。