EQMM 1959/10 No.1 別冊クイーンマガジン1959/Fall

さすがに第一号、豪華なメンバーを揃えている。

題名 作者 評点 コメント
或るフェミニストの話 佐藤春夫 4.0 語り口は悪くないが、終わりが締まらない。大家にとりあえず書いてもらったということか。
女か西瓜か 加田伶太郎 5.0 リドルストーリーだが、「女か虎か」のように考えさせる要素に乏しい。
開高健 7.0 イワナの穴場で出会った釣人二人。中盤までは緊張感があって面白いのに、ラストにひねりがないのが残念。ダールだったら、どんな結末をつけただろうか。
天上縊死 結城昌治 6.5 首吊りの会という設定は面白いが、結末がいささか冴えない。
殉職 高橋泰邦 7.0 海難事故の予備審問がうまく描かれている。意外性の設定には少し無理があるが、志は良し。
海は眠らない 田中小実昌 6.5 調子良く進むストーリーだが、過去との関連がうまくない。
腹を立てたクズ屋 E・S・ガードナー 7.0 やはりガードナーはモノが違う。謎そのものは大したことはないが、法廷を舞台にしたストーリー展開がうまい。
無法地帯 フランシス・アイルズ 4.0 全くつまらないクライムストーリー
巻頭小説 コーネル・ウールリッチ 7.0 雑誌巻頭物を書く機会に勇んだ作家は、ホテルに泊まり込み著作に励むが...ラストは笑わせる。
ライツヴィルの遺産 エラリイ・クイーン 8.0 緊張感のある展開が素晴らしい。動機も説得力のある秀作だ。
鉄道公安官 島田一男 7.5 さすがに巧者、話の進め方がうまい。当時の鉄道の状況もファンには楽しい。
日々の死 岩田宏 巻頭詩
日本探偵小説史<1> 中島河太郎 翻訳の嚆矢「和蘭美政録」
ビフテキ表現学 日影丈吉
恐怖時代の音楽 諸井薫
スターモンスター 都筑道夫
表紙 勝呂忠
扉絵 真鍋博
カット 勝呂忠・吉原澄悦
ページ 208ページ
定価 150円 地方155円

1962年までのEQMMを読み終わったこともあり、ここで一息入れて、読み残していた「別冊クイーンマガジン」を取り上げます。

  • 「別冊クイーンマガジン」は、1959年の冬号から1960年の秋号まで、季刊で4号発行されています。EQMM本誌が殆ど翻訳なのに対し、別冊は日本作家を中心としたラインアップになっており、一部を除き清張以降の新しい作家による新作で構成されています。第1号は、ガードナー、クイーン、ウールリッチという欧米の大家揃いなので、かなり豪華な印象を与えますが、2号以降は日本作家中心となります。
  • この号では、クイーンと島田の作品が光ります。EQMMに載るクイーンの作品は、ほとんど大した出来ではないのですが、こんな作品が残っていたとは少し驚きました。
    島田は鉄道公安官物の第一作、トラベルミステリーとしての面白さもあり、読ませます。
  • 評論関係は今ひとつ。料理、音楽、ホラー映画と幅を広げているだけで、この雑誌にふさわしい内容とは思えません。唯一、ミステリ関係の中島河太郎の「日本探偵小説史」が載っていますが、内容は明治時代の話で、いささか外している感が強い。
  • 結局、この雑誌は4号で終わるわけですが、あまり方向性を感じる編集ではないので、さもありなんという気がします。