EQMM 1960/1 No.2 別冊クイーンズマガジン 1960/Winter

文壇作家に書かせたはいいが、ろくなものがなかったというところですか。

題名 作者 評点 コメント
長い長いトンネル 飯沢匡 5.0 いつまだ経っても抜けられないトンネルという題材は面白いのに、オチがついていない。
サンタクロースの贈物 加田伶太郎 5.0 ラストの暗示が今ひとつ明確になっていない。
背教者レアン 田岡典夫 5.0 背教者の話だが、その動機がありふれていてつまらない。
“中村一郎”の話 十返肇 4.0 同姓同名に殺意を抱くという設定だが、あまり面白くないし、何のオチもない。
サイコロ 三浦朱門 5.5 殺人計画が無駄になってしまう話だが、これも今ひとつ。
多岐川恭 7.0 母の死を疑う少女と、蝶のイメージがうまくミックスされている。
眠り草は何を見る 日影丈吉 6.5 謎の死体は機械による殺人のようだが..ラストは予想できてしまう。
F氏の時計 佐野洋 5.0 奇妙なF氏の話だが、このオチではどうしようもない。
誤差一分 高橋泰邦 7.0 作者得意の海洋物。確執を含む人間関係と嵐の中の展開が良く出来ている。
犯人はいつも被害者だ 田中小実昌 5.0 軽快な語り口だけが取り柄。
長すぎたお預け 結城昌治 7.0 盗賊の仲間割れの顛末だが、それぞれの視点からの記述が面白い。
完全殺人 ジョン・コリア 7.5 チョコレートによる夫人毒殺事件と思われたが、その手段におもわず笑ってしまう。さすがである。
トレイラーの怪事件 アブラハム・リンカーン 5.0 あのリンカーンが書いたと言うシロモノだが、ミステリと言うより弁護士の立場から冤罪に対する啓蒙を図ったといったところでしょう。
環状墜道 島田一男 7.0 今回も快調な公安官物。とにかく楽しく読めます。
殺人者のブルース 田村隆一 巻頭詩
デザイン・イン・ミステリ 真鍋博
日本探偵小説史<2> 中島河太郎 創作探偵小説の誕生
表紙 吉原澄悦
扉絵 真鍋博
カット 北園克衛・吉原澄悦・真鍋博
ページ 208ページ
定価 150円 地方155円
  • 前半の文壇作家の作品群は、今ひとつのものばかりで残念な結果となっています。これまで、EQMM本誌を読み続けていますが、これほど嫌気が差したのははじめての経験です。
  • これらの作品に共通して言えることは、ミステリ短編における結末の重要さに気がついていないことでしょう。何の趣向もオチもなく終わってしまう、そんな作品ばかり続いていました。
  • 思い起こすと、松本清張の初期短編にも、そんな感じの作品が少なくなかったような気がします。その後面白くなっていったのは、オチの重要性に気がついたからでしょう。もしかしたら、海外の短編に極意を学んだのかもしれません。
  • この号のなかでは、そのあたりを知り尽くした作家「ジョン・コリア」が、レベルの違いを見せつけている、そんな感じですね。