EQMM 1960/7 No.4 別冊クイーンズマガジン 1960/Summer
別冊EQMM最終巻。一般作家のレベルの低さに呆れました。
題名 | 作者 | 評点 | コメント |
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おれは月の出を見た | 田岡典夫 | 3.0 | こんな作品を載せてどうする。 |
単位の喪失 | 日影丈吉 | 7.5 | 迷い込んできた犬と、郵便強盗の話がうまくマッチして、面白い出来になっている。 |
殺してやりたい | 笹沢左保 | 7.0 | 失恋した女はタクシーの落とし物に書かれていたメッセージを気まぐれに追う。さすがに展開がうまい。 |
渦の記憶 | 白井竜三 | 6.5 | 脳医学をベースにした作品。ラストはそれなりに理解できるが、あまり効果的ではない。 |
船 | 寺崎浩 | 2.0 | 思わせぶりだけで、全くつまらないスパイ物。それなりに長いし最悪だ。 |
犬の幽霊 | 富島健夫 | 6.0 | 貧乏くさくて暗い話だが、最後のひねりだけは悪くない。 |
無能な犬 | 樹下太郎 | 5.0 | 同期の課長への殺意はつまらない誤解だったという話。 |
川 | 川上宗薫 | 4.0 | これもぱっとしない話。 |
たたけよさらば | 田中小実昌 | 6.0 | 自分を殺した犯人を見つけるという趣向は面白いが、謎そのものがなく、単なる風俗ものだ。 |
大暗礁 | 高橋泰邦 | 7.0 | 開運事故に乗じて出世欲を満たそうという男の陰謀と、救出に当たる男の正義感が良い。専門知識に裏打ちされた迫力ある描写もなかなかのもの。 |
捜査の原則 | 岩田宏 | 詩 | |
日本探偵小説史<4> | 中島河太郎 | 探偵実話とホームズの移入 | |
露顕の美学 | 田中西二郎 | ||
ころしへのいざない | 一条典子 | ||
表紙 | 勝呂忠 | ||
目次 | 三浦誠一 | ||
扉絵 | 真鍋博 | ||
カット | 吉原澄悦・真鍋博・兎笠敏子 | ||
ページ | 208ページ | ||
定価 | 150円 地方155円 |
- 別冊EQMMも4号目で最終巻。このレベルでは続けられなかったろうし、続けられたら読者の迷惑です。特に、3号、4号はひどすぎました。
- 一般文壇から色々な作家を引っ張りでしてきたものの、全くミステリセンスを感じられず、そのレベルは惨憺たるもの。男女関係のもつれや、貧乏くさく暗い話ばかり読まされてような気がします。せめて、ユーモアに富んだ明るい話を書いてほしかった。
- 別冊EQMMの唯一の収穫は、高橋泰邦の海洋物を紹介したことでしょう。この後、高橋は早川の書き下ろしで『衝突針路』を発表。『偽りの晴れ間』などの長編と『ホーンブロワーシリーズ』の翻訳で、海洋物第一人者としての地位を築きました。
- 白井竜三の「渦の記憶」という作品は、「クラボウミステリ影」の第一回入選作とのこと。
これは、EQMM 1960/4 No.46でも募集していたものですね。ただ、この番組、人気が振るわず、1960年8月で終了した模様です。したがって、第二回はなかったということになります。 - 評論で唯一連載だった『日本探偵小説史』について、筆者の中島河太郎は1993年東京創元社発行の「日本推理小説史第一巻」の序文で、
『私があらためて詳しいものを纏めてみようと志したのは三十四年で、「別冊クイーンマガジン」に都筑道夫さんの勧めで連載したが、四冊で廃刊となったので、三十七年から「宝石」に連載したが二十八章まででこれも廃刊となった。四十二年から「推理界」に断続的に載せたが二十回で廃刊となり、四十五年発刊の「推理文学」でも十一回で終り、さらに五十年から「幻影城」ではじめたが、二十一回で廃刊となった。
それぞれ発表誌となった五種の雑誌とも、廃刊の憂き目にあったのだから、余程推理専門誌の刊行が難しいものかがうかがえよう。
すでに三十九年に桃源社から第一巻を刊行し、二十五章まで収めたが、今回は構成をあらためて三巻に纏めるることにした。
それでも戦前だけで職後に及んでいないことが心残りであるから、できるだけ早い機会に続巻をと思っている。』
とのこと。
これで別冊EQMM読了。
続けて本誌に戻りたいのですが、実は1963年以降のEQMMは実家に置いてあることが判明。昨年末に取りに帰る予定でしたが、コロナ騒動で自粛を余儀なくされております。いやな渡世だなあ。