EQMM 1963/2 No.80

中盤の胃もたれを「コニャック」が吹き飛ばしてくれました。

題名 作者 評点 コメント
伜の質問 スタンリイ・エリン 7.0 このオチだけで一本書ける力量に感心。
キュリアス・クイント ドン・ノールトン 8.0 老いた魔術師は自らの死を好事家クラブの課題に残すのだが..。よく出来た設定に感心した。
ある殺人 ヒュー・ペンティコースト 4.0 オチがよくわからない。
冬の夜ばなし ハリイ・ケメルマン 6.0 前号に続いてのニッキー・ウエルト物。今回の謎は今ひとつ。
完全なる論理 エドガー・パングボーン 5.0 妻殺しで死刑を宣告された男の無罪を訴える男。よくある設定だし、ラストが決まらない。
町内の内輪ばなし ノーマン・ダニエルズ 5.0 無責任な住人と警察官の話。本当に内輪のはなしだな。
すっぽん パトリシア・ハイスミス 3.0 母親が買ってきたスッポンに執着する少年。暗くて後味が悪い。
緑色の鵝鳥 ヴェロニカ・P・ジョーンズ 4.0 ストーリーの進め方が冗漫で焦点がはっきりしない。もう少しうまく書けよ。
野守は見ずや 山口瞳 6.0 さすがに文章はうまくスムーズに読めるのだが、ショートショートには収めきれない。
20年後 ヘンリー・スレッサー 7.0 なるほど、そういう考えオチか。さすがです。
脱獄お世話します ジェイムズ・ホールディング 5.0 脱獄を斡旋する看守に一杯食わされた男。ラストが今ひとつ。
干し草のなかの針 フレデリック・ニーベル 8.0 街に越してきた夫妻の自宅に殺人を予告する電話が。ストーリー展開にも緊張感があるし、動機も面白い。
星占い アーサー・ポージス 5.0 最後のフレーズがよくわからない。
死のツイスト パット・マガー 6.5 若い妻と秘書の関係を疑う夫は、彼らの仕掛けた罠にはまったように思われたが。最後にツイストがあった。
コニャックの味 ブレット・ハリディ 7.0 高級酒の隠匿事件に巻き込まれたシェーン。例によって良いリズムで話は進む。
ミステリ如是我聞『壁に二十則』あるいは『ぼくらの敵』 佐野洋
狂乱の20年代(めりけん誤審物語)運命に呪われた男たち(続) 大原寿人
隣の椅子(51) 有馬頼義
マイ・スイン 丸谷才一 迷宮課事件簿
紙上殺人現場(その三十八) 大井広介
ミステリ・オン・ザ・ウエィブ 亜蘭遁 ミステリ番組の攻勢
ミステリ・ニュー・ウエィブ sin ウイルスンの「殺人百科事典」
東京三面鏡(34) 青木雨彦 事件記者日記
探偵小説風物誌 中内正利
表紙 東君平
カット 小松久子
ページ 218ページ
定価 180円
  • この号はショート・ストーリイ中心の構成。巻頭のエリン、ドン・ノールトンのよく出来たストーリーが続き、幸先の良いスタート。ドン・ノールトンという作家の経歴は全く知りませんが、EQMM 1962/9 No.75に掲載された「法のあり方」という作品も中々の佳作でした。
  • 中盤からはいささか低調でしたが、終盤のフレデリック・ニーベル「干し草のなかの針」に感心。この人も全く知らない作家ですが、こういう作品が出てくるところが、EQMMの懐の深いところ。
  • そして、最後はブレット・ハリディのマイク・シェーン物で締めてくれました。

ハリディの「コニャックの味」は、その後EQMM 1962/11 No.77 TVミステリ特集に収録された「死人の日記」とのカップリングで、ポケミス(HPB833)に入りましたが、これがハリディの作品としては最後のものになってしまいました。1960年以降の作品は、ほとんど代作のようですから、致し方ないのかもしれません。

  • 「ミステリ・オン・ザ・ウエィブ」では、「ミステリ番組の攻勢」として1962年代後半からのテレビで、ミステリ番組が盛んになってきたとし、本格物としては、NET制作の「名作推理劇場」と「ミステリ・ベスト21」がその双璧であるとしています。
    その中で、フジテレビ系は11月から「十人の目撃者」(金PM8.00〜9.00)という番組を開始、10人の一般参加者に犯人を当てさせ、その賞金は10万円とのこと。誰が原作を書いていたのでしょうね。