EQMM 1963/3 No.81

後半の盛り上がりを、最後のマッギヴァーンが見事に締めてくれました。

題名 作者 評点 コメント
燈台 エドガー・アラン・ポオ、ロバート・ブロック 6.0 ポーの遺稿をブロックが完成させたもの。出来どうこうは野暮というもの。
最後の答 ハル・エルスン 5.0 何かよくわからないリドルストリーだ。
ロボット殺し リチャード・バンクス 3.0 ロボット物なのだが、何というつまらなさ。
大虎の死 ハロルド・R・ダニエルズ 7.0 友人の分署に監査にきた警部は、彼を疑いながら調査を進める。悪くない人情話である。
アルプス追跡 リック・ルービン 5.0 宝石泥棒を追い詰める探偵。ラストが陳腐で面白くない。
警官は知っている ヒュー・ペンティコースト 7.5 新しく赴任してきた警察署長は地元民の反感にさらされるのだが..。ハッピーエンドで締めるのがうまい。
谷の向こうの家 マーガレット・ミラー 5.0 隣家に心を奪われていく娘を心配する夫婦。幻想的なラストは今ひとつ効いていない。
ピーや 眉村卓 6.0 猫の怪談。悪くはない。
15人の殺人者とひとつの奇蹟 ベン・ヘクト 7.5 15人の医者が自らの殺人行為を告白する会合で、新人は自らの事例を発表する。明るいラストが良い。
カタをつけろ 読み切り連載(1) フレデリック・ニーベル 次号まで保留。
高速道路の殺人者 W・P・マッギヴァーン 7.5 逃亡する殺人犯とそれを追う捜査陣。単純な話を緊張感をもたせて展開する筆力には感心する。
あんたにそっくり 来日したジェイムズ・ボンド 笹川正博
ミステリ如是我聞『犯人は警官』あるいは『タブー』 佐野洋
狂乱の20年代(めりけん女傑物語)20年代のプレイボーイたち 大原寿人
隣の椅子(52) 有馬頼義
マイ・スイン 丸谷才一
紙上殺人現場(その三十九) 大井広介
ミステリ・オン・ザ・ウエィブ マルタ 喰うか喰われるか
ミステリ・ニュー・ウエィブ sin
東京三面鏡(35) 青木雨彦 事件記者日記
探偵小説風物誌 中内正利
表紙 東君平
カット 真鍋博
ページ 218ページ
定価 180円
  • 「あんたにそっくり」というのは読者紹介欄なのですが、今回は「来日したジェイムズ・ボンド」と題し、イアン・フレミングが来日した際の取材記事です。筆者は「朝日新聞外報部記者」とのこと。
  • 「EQMMを読む」を再開して3巻目ですが、ペンティコーストやマッギヴァーンを読むと、レベルが違うことを痛感します。ただし、マッギヴァーンの作品はEQMM本誌ではなく、「サタデイ・イヴニング・ポスト」誌に載った作品を版権を取得しての掲載とのこと。ここにもEQMM日本語版が、「単なるEQMMではない雑誌」に成長していることが伺えます。

マッギヴァーンの「高速道路の殺人者」は、4篇を追加してポケミス(HPB782)に収録されました。もののついでなので、これも読んでみます。
祈らずとも」は不良少年の更生を図る牧師の話。よくある展開ですが、後味が良い。「ウィリーじいさん」は西部の伝説をベースにした寓話。この結末はどこかで読んだ気がすると思ったのですが、マンハント 1959-1 No6に載った「スター・ホテルでみたこと」と同一作品でした。「デュバル氏のレコード」は妻殺しの定型的なクライム・ストーリーで、出来も今ひとつ。「ベルリンの失踪」東ドイツに女性を救いに行くアメリカ人の話ですが、ストーリーがあまりに荒唐無稽なうえ、古いアメリカ的価値観が鼻につきます。後半の2作は、いささか残念な出来となりました。

早川書房 昭和38年7月10日印刷 昭和38年7月15日発行 176ページ 定価180円