EQMM 1963/5 No.83 S・S・ヴァン・ダインパロディ特集

もはや誰も相手にしないヴァン・ダインですが、議論の対象や特集に取り上げられた時代があったのね。

題名 作者 評点 コメント
最後の一言 W・P・マッギヴァーン 6.5 ユーゴの列車内殺人事件。謎は全く平凡だが、「最後の一言」というオチが面白い。
5セントと20万ドル エド・レイシイ 6.0 思わず呆れてしまう展開はギャグだね。
もう片方の靴 シャーロット・アームストロング 7.5 TVドラマの原作にピッタリの作品。設定は面白いし、ちょっと意表を突く展開と安心のハッピーエンド。
メグレと若い女 ジョルジュ・シムノン 5.0 嫉妬深い姉と、その夫と不倫関係にある妹。例によって暗い話だ。
ピンク家殺人事件 S・S・ヴィーンダム 6.0 ヴァン・ダインパロディ特集その1。確かにヴァンスの話を長々と聞かされたら死にたくなるだろうな。
ヴァン・ダインにできることが、どうしてこの私にできないのか? ジョン・リデル 5.0 これはラストがよくわからない。ヴァン・ダインの退屈さをうまく再現しているので、読み切るのが苦痛だったせいだろう。
雄牛殺人事件 トーマ・ナルスジャック 5.0 贋作が本物を上回るわけがない。このシリーズの意味がよくわからん。
森の館 河野典生 4.0 思わせぶりなだけで面白くもない。
教会で死んだ男 アガサ・クリスティー 5.0 ミス・マープル物だが、平凡な事件と盛り上がらない展開にがっかり。
メモリイ・テスト ピーター・B・カイン 5.0 こんな目こぼしをしていいのかな。すっきりしません。
罪なき者をさがせ ロイ・ヴィカーズ 7.0 三人の容疑者のうち一人は無罪という設定が面白い。それを証明する部分は弱いが、最後まで読ませる。
ミステリ如是我聞『ヴァン・ダインに訊く』あるいは『円は閉じられていた?』 佐野洋
狂乱の20年代(お伽噺と没落と) 大原寿人
隣の椅子(54) 有馬頼義
マイ・スイン 丸谷才一
紙上殺人現場(その四十一) 大井広介
ミステリ・オン・ザ・ウエィブ 刺片子 テレビ番組の寿命
ミステリ・ニュー・ウエィブ sin
東京三面鏡(37) 青木雨彦 事件記者日記
探偵小説風物誌 中内正利
表紙 東君平
カット 真鍋博・児玉光雄
ページ 218ページ
定価 180円
  • 今号は「ヴァン・ダインパロディ特集」とのこと。もはやヴァン・ダインは忘れられた存在ですが、佐野洋は「ミステリ如是我聞」で真剣にヴァン・ダインの二十則を論じているし、大井広介も「紙上殺人現場」の中で言及していますから、この時代はまだ、それなりの神通力があったのかもしれないなあ。まあ、そのパロディには最初から期待はしていませんけど。
  • 他の作品に目を転ずると、シャーロット・アームストロングとロイ・ヴィカーズの2作が読ませます。ヴィカーズの「罪なき者をさがせ」は250枚の中編ですが、54年にEQMMに掲載後、400枚に書き足されて1959年に長編として出版されたとのこと。