EQMM 1963/6 No.84

中盤の低調さにはウンザリ。なんとか後半の作品が挽回してくれました。

題名 作者 評点 コメント
死の三角切手 コーネル・ウールリッチ 6.0 鑑定を頼まれた収集家は貴重な切手を横領するが..。ラストが平凡。
16人の影武者をもつ男 ヒュー・ペンティコースト 5.0 気まぐれな馬を制御できる騎手を発見した男はレースに賭けるのだが..。オチがつまらん。
ジョージ・ワシントンを殺した男 リチャード・M・ゴードン 5.0 ショートショート。題名は大仰だが、ちょっとした思いつきを書いただけ。
ポール・ケイン 2.0 何だこの作品。つまらんギャング抗争物だが、ストーリー展開がいい加減で理解できない。
捉われた魂 ドロシー・ソールズベリ・デイヴィス 3.0 人間関係が複雑で話を追うのに苦労する。結局、変な女を書きたかっただけなのか。
二階の老婆 ディラン・トマス 3.0 これまたよくわからないショートショート。ただ不気味なだけで取り柄がない。
もどす 福島正実 4.0 これまた何の面白みのない話。
高い買物 パット・マガー 7.5 暴漢を撃退した男は妻殺しの偽装を疑われる。中々読ませるし、ラストも悪くない。
赤いわな フレデリック・ニーベル 7.0 快調な活劇。主人公の正義感が良い。
ミセス・アフトンの嘆き パトリシア・ハイスミス 6.0 夫の診察を依頼する上品な夫人に惹かれた医師だったが..。予想通りの結末。
闇の中の男 ロイ・ハギンス 7.5 妻の車で焼死体が発見されたことを知らされた男は、必死に真相を探る。いいリズムで一気に読ませるが、後半少しもたつくのが残念。
ミステリ如是我聞『天国と地獄』あるいは『トリックの意味』 佐野洋
狂乱の20年代(めりけん打撃物語)ヤンキースの誇り 大原寿人 ルー・ゲーリックの話
隣の椅子(55) 有馬頼義
マイ・スイン 丸谷才一
紙上殺人現場(その四二) 大井広介
ミステリ・オン・ザ・ウエィブ 紅善人 TV推理ドラマの周囲
ミステリ・ニュー・ウエィブ 3 新しい大学教授のミステリ作家 ユベール・モンテイエの紹介
東京三面鏡(38) 青木雨彦 事件記者日記 目次は(37)と誤植
探偵小説風物誌 中内正利
表紙 東君平
カット 勝呂忠
ページ 218ページ
定価 180円
  • 中盤のケイン、デイヴィス、トマス、福島とつまらない作品を連続して読まされたのには、いささかフラストレーションがたまりましたが、後半のマガー、ニーベル、ハギンスで盛り返してくれました。
  • ハギンスは「サンセット77」の原作者として有名で、ポケミスにも「女豹」(HPB705)、「サンセット77」(HPB961)が収録されています。解説によると、西部劇「マーベリック」の製作者でもあるとのこと。見たことないですが(笑)。TVドラマの原作を書くような作家ですから、さすがに盛り上がるのがうまい。今回の作品も面白く読めましたが、後半もう一捻りあったら、と思わせるのが若干歯がゆい。
  • 佐野洋の「ミステリ如是我聞」では、三好徹の「乾いた季節」が黒沢明の「天国と地獄」のトリック盗用を疑われた事件に触れています。佐野は『一九六三年二月二十日、一人の推理作家が殺されかかった』と始め、東宝の主張が『乱暴極まる言いがかり』だと断定、その無法さを訴えています。
  • ミステリ・オン・ザ・ウエィブ「TV推理ドラマの周囲」では、NHK「私だけが知っている」「黒い組曲」、CX系で「十人の目撃者」「スリラー劇場」「検事」、NETの「名作推理劇場」が姿を消し、推理ドラマが後退していることが書かれています。この後はアクション物が盛り上がってくるのかもしれません。おりからの007ブームもありますからね。