EQMM 1963/8 No.86

安心して読める作家揃いのこの号、期待を裏切りません。

題名 作者 評点 コメント
死者よりの花束 コーネル・ウールリッチ 7.5 嫌々ながらも東部へ出向く女優と護衛する刑事。緊張感のある展開で読ませる。さすがウールリッチ。
ジョン・ホリングの亡霊 エドガー・ウォーレス 4.0 ゴタゴタした設定で筋を追うのが難しい。
死体置場の男 ロバート・アーサー 7.0 破産した夫と、保険金目当てに死を願う妻。クスリと笑わせるラストが面白い。
海を駆ける殺人 ゴードン・ギャスキル 7.0 エキゾティックな舞台設定が楽しいギャスキルの本格中編。今回はヨットの遭難と富豪女性の殺人事件。安心して読めます。
球形の食屍鬼 フレドリック・ブラウン 7.5 安置所の死体を食べたのは食屍鬼なのか。その正体は意外なうえ、妙にコミカルでおかしい。
被告の告白 ヴァージニア・レイエフスキー 2.0 下品でわけのわからない話を、さらに下品な訳で読まされるとは。
不良息子 ヒュー・ペンティコースト 7.0 見捨てた息子からの金の無心に答えた男だったが..。意外な展開と救われるラストが良い。
女王陛下の007号 第1回 イアン・フレミング 連載終了時にコメント。
ミステリ如是我聞『夜の終わる時』あるいは『推理小説的手法』 佐野洋
あなたもミステリ作家になれる ホスト(ハーバート・ブリーン) ディレクタ(稲葉由紀) ゲスト(エリン他19名) 第二講 どんなぐあいに書き始めるか?
暗黒街の系譜(ニューヨークのギャング①) 大原寿人 ギャングの揺籃期
隣の椅子(57) 有馬頼義
マイ・スイン 丸谷才一 「マーニイ」について
紙上殺人現場(その四四) 大井広介
ミステリ・オン・ザ・ウエィブ 弁圭司 この秋からのアメリカTV
マガジンパトロール 両刃の剣、ペイパーバック
ペーパー・チェイス アメリカ探偵作家クラブ賞決定
東京三面鏡(40) 青木雨彦 事件記者日記
探偵小説風物誌 中内正利
表紙 東君平
さし絵 北園克衛・前田亜土・麦健次郎
ページ 218ページ
定価 180円
  • この号の売りは、巻末の連載長編「女王陛下の007号」でしょうが、解説によると「プレイボーイ」誌に連載中のものということです。版権料どれくらい払ったのだろう。一回目を読んでみましたが、正直言って退屈。二回目以降読み続けられるかどうか不安です。
  • 本格ファンにとって嬉しいのが、ゴードン・ギャスキル。今回で5作目ということですが、どの作品も楽しく読めます。海を中心としたエキゾティックな舞台設定も毎回工夫されていますから、日本ならトラベルミステリとして、また、サスペンスドラマの原作として重宝されそうな内容です。ただ、ミステリとしての謎解き部分が弱いことも全作で共通していますね。
  • 表紙のまえがきで、
    「異色の存在だったヒッチコック誌が休刊となり、マンハント誌が改題することになったのは、まことに、さびしい限りです」とあります。
    「マンハント」が1958年8月創刊、「ヒッチコックマガジン」が1959年8月創刊ですから、三誌競合時代は5年程度続いていたということになります。結構、長かったのですね。ちなみに「マンハント」は「ハードボイルド・ミステリイ・マガジン」と改題されましたが、翌年の1964年に廃刊となっています。
  • 第五回EQMM短篇コンテスト入選発表」が掲載されています。
    入選 該当者なし
    佳作(賞金二万円)
    「円空の蛇」和久一
    「作中人物」朝倉三郎
    努力賞(賞金一万円、
    「朝の常連」安永一郎
  • 続けて、「第六回コンテスト応募規定」が『EQMM世界短篇コンテスト再開! 賞金総額180万円』としてPRされています。