EQMM 1964/3 No.93 特集ハードボイルド

「ハードボイルド特集」がぱっとしないなか、エリンが救いでした。

題名 作者 評点 コメント
嵐の闇の中で ヒュー・ペンティコースト 6.0 レイクビューという土地を舞台にしたシリーズ物。作品の出来は平凡だが、人物像が楽しい。
都会はこわい マイクル・ズロイ 5.0 都会のアパートに忍び込んだ田舎者が見たものは、人間の頭皮のコレクションだった。あまり趣味が良くない。
ハムレット異聞 マイケル・イネス 3.0 ハムレットに興味のない人間にとっては全くつまらない。
奇妙な結末 ジョン・D・マクドナルド 5.5 過去の横領を告白した老人は保安官の前で病死してしまう。結末はありきたり。
リディアの墓 ハーバート・ハリス 7.0 肺病病みの妻を殺した男の前に意外な結末が。ショート・ショートの見本のような作品。
天候回復 タルミジ・パウエル 7.0 女の凍った死体を湖から取り出したと保安官に告白する老人。ラストのひねりが面白い。
血まみれのハレルヤ フランク・ケーン 5.0 ジョニー・リデル物の中編。この作者にしては、ありきたりの展開で意外性もない。
夜陰 ダシール・ハメット 4.0 このオチは事前に知らないとわからないだろう。
くたびれもうけ マット・テイラー 6.0 仮装パーティのスリを捕まえる警官のご活躍。他愛ない話だが、妙におかしい。
エゼキエレ・コーエンの犯罪 スタンリイ・エリン 7.5 ローマにやってきた警官は、ある冤罪を晴らすべく行動を開始する。意外性もあって読ませる。
遅すぎた行動 ピーター・チェイニイ 4.0 筋書きが最初からまるみえ。
危険な女 レオ・マレ 2.0 何ともつまらない話。しかも長い。最悪である。
マイク・ハマーは俺だ! テリイ・サザーン
ある探偵作家の街 フィリップ・ダラム レイモンド・チャンドラーの故郷ロスアンジェルス
極楽の鬼 石川喬司
紙上殺人現場(その五一) 大井広介
わが翻訳ことはじめ 中田耕治
世界未解決事件簿 新聞裁判 朝村耕造
ミステリ英雄の横顔 どん底のヒューマニスト 白岩義賢 カート・キャノンの巻
世界の探偵小説① 小鷹信光 ペイパーバッグ・ハードボイルド見本市
ミステリ・オン・ザ・ウエィブ 刺片子
野暮な話
閑人雑記帖 木村荘十
マガジン・パトロール TEN 007号の対抗場
ペーパー・チェイス ストックフォード週報
探偵小説風物誌 中内正利
響きと怒り
表紙 勝呂忠
さし絵 勝呂忠・真鍋博・小島洋吉・田中武柴・浦久保賢樹・田中陸邦・江渕晃夫
ページ 218ページ
定価 180円

ハードボイルド特集」として、ハメット「夜陰」、フランク・ケーン「血まみれのハレルヤ」、ジョン・D・マクドナルド「奇妙な結末」、レオ・マレ「危険な女」の四作が取り上げられているのですが、ハードボイルドらしい作品と言えるのは、ケーンのリデル物だけ。さらに最後のマレの作品など、「マレに見る駄作(笑)」だったせいもあって、ぱっとしない特集となってしまいました。

前号のアンケートについて、前説で少し触れられています。ミステリ以外の小説の掲載には、載せたほうがいいというのと、載せないほうがいいという意見がほとんど同数になっているとのこと。さらに、続けています。

昨年のことでした。ちょうど都会小説特集のEQMMが出たころです。私たちはあるひとに会いました。女のかたです.本誌創刊以来の愛読者で,ハヤカワ・ミステリも残らず読んでいるほどの探偵小説通です.いや、じつは,豊富な探偵小説の知識を駆使して,きめの細かいユニークなミステリを書いている女流作家なのです。
彼女は都会小説特集について,私たちにうれしいことを話してくれました。つまり、あの特集に載ったような, 都会的なしゃれた短篇をちっとも抵抗を感じないで読むことができたそうです。それまでEQMMを愛読してきたのは、都会小説特集の作品に共通するソフィスティケーテッドな味があったからではないか、と彼女は打明けてくれました。

とあります。上記の女流作家とは、小泉喜美子のことでしょうかね。