EQMM 1964/7 No.97 9周年記念号
ガードナーの中編の出来だけが際立つ九周年記念号。
題名 | 作者 | 評点 | コメント |
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ヨット・クラブ | デイヴィッド・イーリイ | 6.0 | ビジネスに熱意が持てなくなった男は謎のクラブに入会する。突然の結末がいささか突飛すぎた。 |
強盗アラカルト | シオドア・スタージョン | 6.0 | 他愛のない作品だが、後味は悪くない。 |
女の泣き声 村の物語(Ⅲ) | L・E・ビーニイ | 3.0 | 何が書きたいのか全く理解できない。これをシリーズで掲載する編集者は、さらに理解できない。 |
酒場の男 | コーリイ・フォード | 7.0 | 見開きのショートショートだが、ちょっとしたオチが面白い。 |
黒眼鏡の楽団 | ロバート・L・フィッシュ | 6.5 | シュロック・ホームズ物。あまり切れ味は良くないな。 |
失踪した男 | E・S・ガードナー | 8.5 | 記憶障害の男を追って山中に探索赴く夫人一行は、死体を発見するが..。これはミステリとしても良く出来ているし、西部の雰囲気もいい。ガードナーはさすがにすごい。ウエスタンでも書いてほしかったな。 |
わが友・マートン | ジュリアス・ファースト | 4.0 | 幽霊にとりつかれた男の話だが、くどい上にラストがつまらない。 |
近づいてくる…足音は | ウイリアム・アイリッシュ | 5.0 | あまり面白くない小品。 |
憲法違反 | ヘンリー・スレッサー | 6.5 | ラストはギクッとする。 |
007号は二度死ぬ(1) | イアン・フレミング | ||
フレイミング・フレミング | 都筑道夫 | ||
トコという男(2) | 山川方夫 | ||
コラムニスト登場 | ハイ・ガードナー | 小話 | |
極楽の鬼 | 石川喬司 | ||
紙上殺人現場 | 大井広介 | ||
わが翻訳ことはじめ | 福島正実 | ||
マガジン・パトロール | K | セイント・ミステリ・マガジン | |
ペーパー・チェイス | 吾 | ロバート・アシュレイの「コリンズ伝」 | |
探偵小説風物誌 | 中内正利 | ||
響きと怒り | |||
表紙 | 勝呂忠 | ||
カット | 勝呂忠・真鍋博・田中武柴・上泉秀俊・小島洋吉 | ||
ページ | 200ページ | ||
定価 | 180円 |
本号でEQMMは九周年を迎えた模様。前説で『翻訳探偵小説の雑誌が九年もよく続いたものです。(中略)編集者は、この九年のあいだに、都筑道夫、小泉太郎の両氏から三代目の私たちにかわったわけですが、読者のお便りを読んでいて、私たちにいちばんこたえるのは、「昔のEQMMは面白かった」という批判です。』とぼやいています。今号の「響きと怒り」にもまさしくそのような批判が寄せられていました。
さて、この九周年記念号ですが、小説の半分はフレミングの「007号は二度死ぬ」の連載一回目が占めており、これが記念号にふさわしいかどうかは読者によって分かれるところなのでしょうが、個人的にはウンザリというのが正直な所ですね。
その中で、ガードナーの「失踪した男」に救われました。この作品については解説で『恐らく、この中編は、ガードナーが数多く書いた中編のなかでも、いちばんおもしろいものではないでしょうか。ガードナーは実に楽しげに本篇を書いています。』とありますが、それが読者にも伝わってくる秀作でありました。西部アイダホの山地が舞台なのですが、その描写の旨さとちょっとした意外性もあって、小説としてもミステリとしても面白い作品に仕上がっています。ガードナーには、「西部を舞台にしたウエスタンミステリをシリーズで書いてほしかった」、そんな思いのする作品です。