EQMM 1964/9 No.99
久しぶりに読みごたえのある佳作揃いの号。ただし、007を除く。
| 題名 | 作者 | 評点 | コメント |
|---|---|---|---|
| 死は雲雀にのって | ロイ・ハギンス | 8.0 | サンセット77物。妻か不倫相手の男が自分を狙っているという男の依頼で、共にヨットに乗り込んだベイリー。最後まで読ませます。 |
| 落着きはらった男 | パット・フランク | 4.0 | 妻殺しのアリバイ作りも、それが見破られる展開も杜撰すぎる。 |
| 暗黒街の掟 | ロバート・カースン | 6.0 | 探偵作家の息子の犯罪を母は嘆くが。まあ、笑って読めます。 |
| 誤った証言 | デイモン・ラニアン | 3.0 | 真面目な話なのか、なにか趣向があったのか、よくわからない。 |
| まぐれ当たり | ニコラス・ブレイク | 7.0 | ナイジェル・ストレンジフェイズ一人称の本格物。悪くない出来。 |
| 愛と盗み | ピーター・チェイニイ | 8.0 | 昔の偽装結構をネタにゆすられた女は探偵に調停を依頼する。よく出来た展開で、後味もよい。 |
| ポピイの謎 | パトリック・クェンティン | 7.5 | ダルース夫妻物。遺産目当てに犬を毒殺しようとする事件に、アイリスが乗り出す。ラストのちょっと意外な設定が面白い。 |
| 追いつめられた男 | リチャード・デミング | 7.0 | 定型B級ハードボイルド中編。サラッと読めます。 |
| 007号は二度死ぬ(3) 完結篇 | イアン・フレミング | 4.0 | 日本が舞台。前半はボンドとタイガー田中の弥次喜多道中、後半は桃太郎の鬼退治かな。時々笑えるのが救いです。 |
| EQMM編集者殿 | 佐野洋 | ||
| CWA賞とMWA賞 | |||
| クイーンは死なず | 木々高太郎がクイーンの一人が死んだという誤報を流していたらしい。 | ||
| トコという男(4) | 山川方夫 | ||
| 極楽の鬼 | 石川喬司 | ||
| 紙上殺人現場 | 大井広介 | ||
| わが翻訳ことはじめ | 青田勝 | ||
| 世界未解決事件簿 | 青木雨彦 | ||
| ミステリ英雄の横顔 | 白岩義賢 | 優雅な一人狼 クランシー・ロス | |
| ペーパー・チェイス | ten | ジョン・ル・カレの素顔 | |
| 探偵小説風物誌 | 中内正利 | ||
| 響きと怒り | |||
| 表紙 | 勝呂忠 | ||
| カット | 勝呂忠・真鍋博・竹久不二彦・小島洋吉・田中武柴・杉村篤・新井恭子 | ||
| ページ | 200ページ | ||
| 定価 | 180円 |
この号は、ロイ・ハギンスのサンセット77、クェンティンのダルース夫妻、デミングの私立探偵ムーン、珍しく一人称で登場するブレイクのストレンジウエイズとシリーズ物に加え、チェイニイの軽快なハードボイルドと佳作揃い。これだけ読み応えのあるEQMMは久しぶりです。
前説では、少し前の読者アンケートに対するフィードバックでしょうか、長篇連載についてコメントしています。
ここで、長篇の連載について、私からの考えを書いておきます。じつのところ、私たちは連載には反対なのです。一挙掲載というのも反対です。連載のばあいは興をそがれるし、一挙掲載では、ほかの短篇が載らなくなってしまう。しかし、フレミングのばあいは、なるべく早く読者に紹介したい。読者のほうも早く読みたがっている。それじゃあ、連載するのが読者へのサービスになる、と考えられるわけです。
とのことですが、その後のEQMM、HMMを見ていると、長篇連載にかなり頼っていることがわかります。まあ、今号のように読み応えのある作品を揃えるのは至難の業でしょうから、致し方ないのかもしれません。
さらに続けています。
「ところで『メグレ警視の回想録』のシムノンは、べつの理由から連載にしました。不当に読まれていないこの作家の長篇を紹介するために、ひとつのキャンペーンとして、連載にしたのです。だからこそ、私たちは原則を犯してまで、連載を試みたわけです。007号シリーズはべつとして、今後も、後者の目的からまったく無名の作家の長篇や、あるいは話題になっている問題作を連載にすることがあるでしょう。
シムノンはこの時代も人気がなかったようです。
「第六回 EQMMコンテスト第二次審査通過作品」が発表されています。応募総数は、四百四十六点とのこと。
会議は踊る 朝倉三郎(堺市)
家出 滝三之助(東京都)
解毒剤 宇美吉彦(東京都)
殺碁 広田一義(北九州市)
殺意の構成 立花明(水戸市)
食後の妙薬 筒井道生(福岡市)
風船 早奈也人 (東京都)
凶器の履歴 柊芥子太郎(桐生市)
一片の真実 廣乃美智(東京都)
碧眼 安永一郎(北九州市)
正直言って、「まだやっていたの」という感が強い「EQMMコンテスト」。今回の候補も、全く知らない名前ばかりですから、その後作家として一本立ちした人はいないようです。結局、このコンテストは第一回の結城昌治だけということなのでしょう。