EQMM 1964/10 No.100 100号記念特大号

100号記念に日本作家では盛り上がりません。

題名 作者 評点 コメント
暴力への渇き フランソワーズ・サガン 4.0 なんでこんな小説がEQMMに載るのだろう。
世界一のお尋ね者 ヤングマン・カーター 3.0 これもつまらない話。
人殺し屋敷 デイ・キーン 5.0 妻の財産を横領し地下室に塗り込めた男。ラストはよくわからん。
格安のミンクのコート シャーロット・アームストロング 6.5 盗品のコートを巡るコメディ。間抜けな犯行には気が抜けるが、まあ読ませる。
残像 白岩義賢 4.0 このオチは何が言いたいのだろう。
男か? 熊か? 生島治郎 6.5 日本代表ミステリー選集02 犯罪エリート集団(中島河太郎 権田萬治編)で読了済み
ローマのチャンピオン ポール・ギャリコ 8.5 ローマの格闘家彫像の真偽を、アメリカ人スポーツ記者がボクシング論で解明。痛快な作品。
エラリイのママ登場 マーガレット・オースティン 5.0 ドメスティックミステリだが、いかんせんミステリのセンスが感じられない。
三つの声 山川方夫 6.0 ピラニアを使った殺人計画は皮肉な方向に。
盗むたのしみ 都筑道夫 6.5 落語のような話だが、さすがに読ませる。
京子の家 石川喬司 4.0 古臭くつまらないブンヤ物。
幻の女 田中小実昌 2.0 くだらない話をダラダラ聞かされる身になってほしい。
ベイ・シティ・ブルース レイモンド・チャンドラー 6.0 事件が少し複雑すぎるのでついていくのに精一杯。そのせいで、ラストの意外性が効いていない。
スリラー小説作法 イアン・フレミング
ひっぱりだこの007号 大井広介 「紙上殺人現場」は休載
わが翻訳ことはじめ 清水俊二
再びジュームズ・ボンドについて 丸谷才一
ペーパー・チェイス TEN スピレーンの新作「ザ・スネイク」
探偵小説風物誌 中内正利 「私の風物採集」として舞台裏を書いている。
響きと怒り
表紙 勝呂忠
カット 勝呂忠・真鍋博・竹久不二彦・小島洋吉・上泉秀俊・杉村篤・新井苑子
ページ 234ページ
定価 210円

前説で『百号記念ということで、EQMMに馴染みの深い執筆者のかたたちに創作をおねがいしました。』とありますが、「100号記念特大号」の売り物が日本作家、それも半数以上が素人作家では盛り上がりようがありません。『石川喬司さんなどは、柄じゃないと尻込みされたのですが...』とありますが、それが良識というものでしょう。それらのページ水増しで、いつもより高い特大号を買わされた当時の読者こそ、いい面の皮です。ちなみに、『また、来月号から本誌の定価が一九〇円になります。』ときては、もうなんとも言いようがありません。

今号で唯一楽しめたのはポール・ギャリコの「ローマのチャンピオン」というボクシング物。最近本誌にたびたび掲載されるボクシング小説は、どれも辛気臭くて暗い小説ばかりで、うんざりさせられていたのですが、ギャリコはさすがに読ませます。