EQMM 1965/9 No.112

サラッと読める作品ばかりで、読み応えに乏しい。チャンドラーの中編が救いか。

題名 作者 評点 コメント
左腕投手の殺人 ヒュー・ペンティコースト 6.0 ジョージ伯父物。謎はつまらないがシリーズ物の強みで楽しく読める。
かえり道 リチャード・M・ゴードン 4.0 オチがよくわからん。
ダン・オダムズを殺した男 ダシール・ハメット 4.0 題名通りの話で何のひねりもなくつまらないだけ。
真夏の夜の疑惑 トマス・B・デューイ 5.0 他愛のない話だが、後味は悪くない。
ひき逃げ ニール・M・クラーク 6.5 ひき逃げの皮肉な結末だが、少し都合が良すぎる。
カーテン レイモンド・チャンドラー 7.5 さすがチャンドラー、風格を感じるハードボイルド短編。犯人の設定も面白い。
二種類の殺し リチャード・デミング 6.5 悪党同士を噛み合わせて上前をはねる主人公。よくある通俗物だが楽しく読める。
死を呼ぶトラブル ロバート・トゥーイ 5.0 逃亡者を殺して金を巻き上げようとする男は、予想外の罠に陥る。あまり面白くない。
セイントと因業家主 レスリー・チャータリス 5.0 セイントが計略で家主を陥れるだけの話で、底が浅い。
メグレと若い女の死(1) ジョルジュ・シムノン
ジェイムズ・ボンド白書3 007号の女たち O・F・スネリング
秘密結社の手帖 澁澤龍彦 政治的秘密結社(二)
進化した猿たち(3) 星新一 ぬれ手でアワ
戦後推理小説裏面史(3) 大西順行
EQMM五番館 大伴昌司
別れ 梅田秀俊
名探偵は誰か? 萩原閑子
極楽の鬼 石川喬司
紙上殺人現場 大井広介
探偵小説と私 中内正利
陪審席
響きと怒り
表紙 勝呂忠
カット 勝呂忠・真鍋博・杉村篤・金森達・新井苑子・池田拓・伊藤誠一
ページ 202ページ
定価 190円

最近のEQMMはあまり読み応えがない。長編分載とその号の目玉と思われる一作品だけに頼っていて、その他のセレクションがあまり良くないせいでしょう。EQMMも残り4冊、一気にスパートをかけたいところなのですが、どうもモチベーションが上がりません。そのうえ、今号からの長編分載はなんとシムノン。いやがらせとしか思えない(笑)。

今回はチャンドラーの「カーテン」が目玉。話そのものは、やたら人が殺されるというハードボイルドによくある展開なのですが、マーロウの冷静な言動に品格を感じます。稲葉明雄の訳も良いのでしょう。田中小実昌みたいな妙にタフガイを気取った訳文には、古臭さと下品さを感じてしまうのですが、稲葉の訳はその弊害がありません。

最終ページに「第七回年次コンテスト応募規定」が掲載されています。EQMMも残り少ないのですが、結果はHMMで発表されたのでしょうか。