HMM 1966/7 No.122
前半はつまらない作品ばかり。10周年記念号が泣いてるぞ。
題名 | 作者 | 評点 | コメント |
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007号の追求 | イアン・フレミング | 5.0 | 戦争犯罪をボンドが指摘するだけの話。 |
ローマの恐怖 | アルベルト・モラヴィア | 3.0 | 二人組の強盗の話なのだが、その行動が情けないので読まされるこちらはうんざりだ。 |
雨の夜だけ | マーク・ヴァン・ドーレン | 4.0 | 思わせぶりで何が書きたいのか理解できない。作者のひとりよがり。 |
警官殺し | ピエール・カミ | 3.0 | くだらない話。 |
繭 | ジョン・グッドウィン | 6.5 | 生理的に気味の悪い話だが、なかなか読ませる。 |
刺青の男 | レイ・ブラッドベリ | 7.5 | 老婆が描き出した刺青のイメージが印象的だ。 |
やりのこした仕事 | ロアルド・ダール | 5.5 | 最愛の夫をなくした女性。昔のボーイフレンドとの出会いとエロチックな展開からの結末はいささか残酷である。 |
日光浴と死と | マイケル・イネス | 6.0 | 双子入れ替わりかと疑われた事件だったが、結末はちょっと腰砕け。 |
月曜日、突然に | シャーロット・アームストロング | 4.0 | 姉の死に疑惑を抱いた妹は残された家族に会いに行く。退屈な展開のうえラストに何もなし。 |
クラシック・カー博物館の殺人 | ケリイ・ルース | 7.5 | クラシック・カーマニアの富豪殺人事件。恋人の疑いを晴らすために奔走する女性が健気。後味も良く楽しく読めた。 |
馬に乗った水夫4 | アーヴィング・ストーン | ||
死との契約2 | スティーヴン・ベッカー | ||
進化した猿たち | 星新一 | ||
地獄の仏 | 石川喬司 | ||
私の好きなベスト5 | 結城昌治 | ||
現代アメリカの風物 | 中内正利 | ||
hmm5番館 | 大伴昌司 | ||
ノンフィクションガイド | 青木雨彦 | ||
ミステリ名簿 | 大伴昌司 | 結城昌治 | |
新着書紹介 | |||
アメリカーうらおもて | 小鷹信光 | ||
響きと怒り | |||
一体おれはどこにいるのだ | 梅田秀俊 | ||
表紙 | 真鍋博 | ||
目次・扉 | 真鍋博 | ||
カット | 勝呂忠・真鍋博・杉村篤・新井苑子・金森達・池田拓 | ||
ページ | 250ページ | ||
定価 | 260円 |
巻頭言で
十周年記念号ですが、ご存知のように、一年早く昨年この記念号を出してしまいました。
とあります。なるほど、昨年の7月号にてEQMM 1965/7 No.110 創刊10周年記念特大号 と謳っていますね。
まあ、なんとも情けないミスですが、そのせいでしょうか、今号は雑誌の背ではなく、表紙に小さな活字で「創刊10周年記念号」とだけ記されていました。
となれば、この号こそ「創刊10周年」にふさわしい内容で名誉挽回に努めてほしいものなのですが、前半の作品はどれも出来が芳しくなく、いささかうんざり。ようやく、巻末の中編ケリイ・ルース「クラシック・カー博物館の殺人」で若干盛り返したというところでしょうか。
このところの「ミステリ・マガジン」はあまりぱっとしませんが、これは本誌に限らず、ミステリ界全体に言えることかもしれません。1964年からこの年(1966年)あたりはジェームズ・ボンドを始めとするスパイ小説全盛であり、個人的に「ミステリ暗黒時代」ではないか、と感じています。
先の巻頭言でも
最近はハヤカワ・ミステリも雑誌のほうもスパイものばかりじゃないかという叱言を食いますが、とにかく英米のミステリの新刊の八割までが、スパイ小説だといっても過言ではないので、せいぜいそのなかから傑作を選んで紹介するというのが私たちの義務だと思います。
と編集部もいささかうんざりしているのでしょう。
なお、表紙は今月から真鍋博に交代。表紙の言葉で、
かねてから表紙でやってみたいアイデアがあった。写真と絵を組み合わせるのではなく、写真の上に絵を書き込んでいくのである。
と語っています。